家電口論

2018年7月9日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

VRをなぜ映画館で観るのか

 VRは個人体験。冒頭に書いた通り、なぜ映画館で観るのか、疑問が出てくる。答えは「品質」と「共感」だ。品質は、映像、音両方だ。ここで使われるVRゴーグルのベースは、中国のPico(ピコ)社製。これをVAIOがリファインしたものだ。特長は6DoFを取り入れたこと。これはX、Y、Zの立体軸にピッチング、ヨーイング、ローリングという各軸の回転を組み合わせたモノで、立体かつ奥行きも含め、各方向への動きが実にスムーズになる。セキュリティー、高画質も含め、この映像品質を各ユーザーに等しく提供するためだ。

VAIOチューンのVRゴーグル斜め前から。軽量化を強く望みたい

 また、音のクオリティの問題がある。そもそも、ヘッドホンだと意図した低音が再現できないことが多い。だったら、VR+ヘッドフォンではなく、VR+劇場のサウンドシステムで、どうだと言うわけだ。最近の劇場のサウンドシステムはよく出来ており、音量設定さえ間違えなければ、映像にドンピシャのと音を楽しめる。

 共感は説明の必要もないと思う。初デートが映画館と言う人は多いと思う。それは体験共有したいからだ。耳がフリーだと、隣の人の状態はなんとなくわかるもので、全体的な雰囲気を高めてくれる。

VRのネック、ゴーグル

 やはり、最大の問題は、VRゴーグルだろう。筆者は、完全フィットのゴーグルに出会ったことがない。メカを組み込まなければならないため、重いからである。

 今回は坐っている限りにおいて、ズレの問題はほとんどなかったが、重いのは欠点だ。正直、長時間の鑑賞には向かない。初めは「非日常体験だから」と言われ、納得しても、早々に問題になるだろう。また、VRゴーグルは共用なため、観客で使い回される。このため眼の周りに使い捨てのマスクを付ける。これも煩雑だ。VRは未だ黎明期のように思う。

第一印象

 短編映画「夏をやりなおす」を見る。主人公は、アニメ顔の女の子。これは3Dのワイヤーフレームにテクスチャーを貼り、3D化した人を、再度平面化することにより作られており、2Dと3Dの中間の独特の感じ。

 女の子の仕草は、遠目には、はっきりCGと分かるのだが、アップはかなり作り込まれており、アニメの表現としてはギリギリ及第点があげられるレベル。

 しかし、鼻の処理はNG。アニメはマンガを動かすために、その画は輪郭を持つ。ところがま正面の鼻に輪郭を入れると、妙な顔になる場合が多い。このため、色差で描写することが多いのだが、今回の主人公は、鼻の頭の色が濃く、黒ポチに見えるのだ。そうなると、習字で墨が付いた彼女を相手にしているようなもので、どうにも困ってしまった。ピクサーが、フルCG化アニメで「トイ・ストーリー」の描写を作ったように、新しい描写が必要だ。

 しかし空間描写はかなりのもので、かなりのリアリティ。ストーリーそっちのけで、キョロキョロしてしまう。ただやはり、ディテールの描き込みが足りてなく、ジブリ映画のように、背景美術鑑賞とまでは行かない。が、これをアートの感じで作れたら、話しは変わってくるというポテンシャルをヒシヒシ感じる。

 感心したのは臨場感。「自分目線」の映像だ。手、服などもないし、自分の声もないので気づきにくいが、彼女の隣で、彼女を見ている臨場感はかなりのもの。

 そして「自分が体感するような動き」。これが抜群によかった! ネイキッド・バイクに乗った時のような剥き出しの感覚なのだ、ウサイン・ボルトのような、普通の人が味わえないようなスプリント、タイソンのハンマーパンチなど、非日常の経験が凝縮されているような感じと言うと、お分かり頂けるだろうか。

 考えてみると、VRは体験し難いことを体験するためのツールだが、体感するとやはり「スゲー」となる。劇場の売りであるサウンドは、非常にナチュラルで、ストレスを全く感じない。

 本当に映画の一分野として認知してもらうには、直さなければならないところが山ほどあるモノの、非日常な世界を体感できる魅力があると言うのが第一印象だ。

 ディズニーランドのアトラクション「キャプテンEO(世界で最も多く見られた3D映画)」を初めて見た時の興奮がそこにはあった。

必要経費と対価

 

 今回の先行体感上映は、私の見た約6分のオリジナル作品「夏をやりなおす」を含め、「おそ松さんVR」「evangelion Another Impact(VR)」の3本。アニメで人気の「おそ松くん」そして「エヴァンゲリオン」のラインナップが東映の本気を感じさせる。

 他2本に関しては、短編という以外の情報はないが、同等の時間を思われる。3つの世界に入り込む価格は、1500円。これは破格ともいえる。VRゴーグルは、3D眼鏡と一桁以上コストが違うし、技術は全部新開発。ゴーグルの装着サポートなどに、人を付けるとなると、コストはさらに嵩む。

 ちなみに今、映画の当日券は1800円。3Dで+300円(3D眼鏡持ち込みの場合。ない人は+100円)、IMAXは+500円、4Dで+1000〜1200円。妥当な線としては、VR+500〜1000円だろうか。個人的には、作品の質を上げてもらい、ゴーグルを修正してもらえれば、一作品(もち120分)、2500円はありだと思う。

 いずれにせよ、未来を問う上映は、新宿バトル9で、7月2日から1カ月行われる。皆さんはどんな印象をもたれるであろうか?

  
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