世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月20日

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 6月28日付のProject Syndicateのサイトで、パリのモンテーニュ研究所のドミニック・モワジ上級顧問が、欧州と米国の関係悪化について、「大西洋の亀裂」と題する論考を寄稿している。その主要点を紹介する。

(BluIz60/Art-Of-Photo/Pingebat/iStock Editorial/Getty Images Plus)

 米国と欧州に亀裂が生じていることは疑いない。それは世界の大国となった中国への対応を巡ってのものでもあれば、また、トランプ大統領の挑発的手法のせいでもある。

 1945年から1989年までの冷戦期は、米ソ二極化の世界秩序で、核の均衡抑止で安定が保たれていた。冷戦後は米国の覇権による秩序が保たれたが、それでもテロリズム等の脅威があった。しかし、現在は新たな段階に入り、米国が世界の中で孤立する方向にある。

 最近のことについてだけでも、トランプ政権は中国のみならずアジアや欧州の同盟諸国にも高い輸入関税を課した。G7サミットで同盟諸国の不公正な貿易を指摘しながら、一方、シンガポールでは独裁者の金正恩に会って褒めたたえた。

 今日、米国は何のために戦うのか。この不確実性によって、大西洋同盟はリスクにさらされている。

 ただ、大西洋同盟がリスクにさらされたのは、今日だけではない。1960年代初頭、ド・ゴール大統領がNATOの軍事組織から脱退するということがあった。しかしそれはフランスを孤立させ、大西洋同盟を弱体化することにはならなかった。

 2003年にも大西洋同盟は試練に直面した。フランスとドイツ等は、米英両国のイラク侵攻に参加することを拒否した。それでも大西洋同盟は生き残った。

 過去と今日が異なるのは、米国が大西洋同盟を弱体化している点である。「米国第一主義」は、「米国一人主義」と言われるが、今そういうことが起きている。

 軍事的に米国は、世界第1位でいられるだろうが、その支配も保証されているわけではない。特に、巨額の軍事投資をしている中国がある。重要なのは、ハード・パワーのみでは同盟を維持できないし、まして世界的リーダーシップを取ることは難しい。

 トランプ大統領はこのことを認識していないが、だからと言ってトランプ政権が終われば済むというわけではない。米国の有権者には、一国主義や孤立主義を信奉する人達が大勢いる。

 欧州の古くからの米国の同盟諸国は、この現実に適応しなければならない。

 米国が世界で指導力を発揮し続けたいのなら、真の同盟諸国の支援が必要である。さもなければ、「中国をより早くより偉大な国にする」ことになってしまう。

出典:Dominique Moisi ‘The Transatlantic Rupture’Project Syndicate, June 28, 2018
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-destroying-transatlantic-alliance-by-dominique-moisi-2018-06

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