2024年4月25日(木)

したたか者の流儀

2018年7月20日

真剣勝負の毎日であればこそ億円単位の報酬も正当化される

 そんな形骸化した株主総会や有価証券報告書に経営トップ自らの発言を入れるように御当局は舵を切り始めるというわけだ。現状、信託銀行のアドバイスによるものかは知る限りではないが、そもそもビデオで過ぎた期の報告をするのは、あまりにお手軽過ぎるのではないだろうか。

 社長であれば、結果の良し悪しを自らの言葉で株主に語りかけ、その激務と苦労を肌で感じてもらう最高の機会と思うがいかがであろうか。真剣勝負の毎日であればこそ億円単位の報酬も正当化されるというものだ。

 現在多くのCEOの行動は、サラリーマンなれの果てのように見える。報酬だけは米国スタイルで高額をめざし、自らの言葉では経営を語ることはないとすれば早晩日本の株式会社資本主義も滅びてしまう気がする。

 ところで6月19日に時価総額7000億円に達したIPO、メルカリが東証マザーズに登場した。メルカリほどの企業になれば独自のスタイルを模作するかもしれない。しかし、毎日のように登場する新規公開企業は、起業してからやっとここまで到達したというマイル・ストーンとして上場であろう。証券会社や友人経営者と語らって、信託銀行を選定し、始めての経験である株主総会を頂点とした株主対応をほぼまかせることになるのだろう。

 信託銀行側も業界としての生き残りをかけて、証券代行業務やその周辺業務に注力するに違いない。しかし、既に信託銀行は事実上3行となってしまい、日本的な均一化をめざすことで、ますます形骸化した株主対応ビジネスに邁進する危惧を感じてしまう。

 そして、いつの日か振り返ると、株主優待制度のように世界の資本市場のどこにも存在しないような、株主総会や有価証券報告書に磨き上げられてゆく気がする。その対局にあるのが、ウオーレンバフェット・バークシャーハザウエーのスタイルだと全員が既に認識しているのではあるが、決して群れから離れる行動は取らない気がする。

 実際問題、新しく公開する企業は先達をまねることが肝要であろう。しかし、“日本武芸”には守、破、離という、読んで字のごとしの言葉もある。どうか、アドバイスを最初は聞いても、そのうち世界に通用する独自の境地を各企業とも開いてもらいたいものだ。

  
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