2024年4月20日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年5月17日

 特に安全性に関する疑問、具体的には米国の原子力産業と政府規制当局者の実績に関する疑問を徹底的に掘り下げてきた。

***

 本紙が暴いた(あるいは思い出させた)信じ難い事実とスキャンダルには、必然的に生じる「テクニカル」な問題だけでなく、とてつもなく深刻な生命を脅かす違反行為について、原子力規制委員会(NRC)のスタッフが十分な制裁措置を取ることを拒み、発電所の幹部と所有者を決して罰しないという40年間のパターンがあった。

 なぜか? 理由は2つある。まず、記録が残されている多くのケースでは、NRCの担当者はワシントンの強力な業界ロビイストによる個人的な報復を恐れたからだ。言い換えると、自分のキャリアを守るためだ。非常に人間らしいかもしれないが・・・。

 次に、何より重大なことに、NRCのスタッフが、これまで規制する責任を負ってきた業界で高額報酬の仕事に就くために辞任したという文書記録が残っている。言い換えるなら、「AMAKUDARI」は日本だけのものではない。普遍的だ。

 現に、業界関係者と発電所の安全対策責任者が生命を脅かす深刻な問題について宣誓下で嘘をついた時に、確認された多くのケースでNRCが違反者を一切処分しない、あるいは限られた軽い罰しか課さないとあっては、両者の不当行為はどっちもどっちだと言える。

 議会は本来、NRCの「監督官を監督する」ことになっている。だが大抵、問題の「監督」は真剣な努力につながらず、安っぽい宣伝行為のスタンドプレーと化す。このことは、業界のロビイストたちが議会のほかのメンバーを説得し、嫌疑には根拠がないと思い込ませるのを容易にする。

 我々がこれまで東京電力と日本の規制当局について読んできた報道からすると、米国におけるこの嘆かわしい悪用の繰り返しは、ありふれた話に聞こえるのではないだろうか。米国が福島やチェルノブイリのような事故に一度も見舞われなかったことは信じ難いほど幸運だった。それはあくまで、運でしかないのだ。

***

 実に多くの疑問や教訓が明らかに日本に当てはまるので、もし興味があればパソコンに向かって、ニューヨーク・タイムズのウェブサイトをチェックしてみるといい。サイトはうまく構成されていて、「購読」したくない、あるいはする必要がない場合には、「無料ゲスト」の限られた権限内でアクセスできる。

 米国の議会とメディアは次第に議論と調査への「関与」を深めている。日本のメディアもきっとそうだろう。

 米議会と日本の国会の構造上の根本的な違い、中でも特に、公的・民間シンクタンクが日常的に議会に与えるほぼ無限の援助と比べて、国会には依然、専門的かつ客観的な人的支援が欠如していることは、菅首相が呼びかけた盛大なショーにとって、克服できない障害となるかもしれない。

 これが日米協力の有益な分野になり得るかどうかは興味深い問題だ。今月はこの辺で終わりにしよう。
 


「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。


新着記事

»もっと見る