WEDGE REPORT

2018年7月17日

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金子熊夫 (かねこ・くまお)

外交評論家・エネルギー戦略研究会会長

外交評論家。元外交官、外務省初代原子力課長、元東海大学教授。退官後エネルギー戦略研究会(通称EEE会議)を創設し、会長として現在も活躍中。主な著書は「日本の核 アジアの核」(朝日新聞社刊)、「小池・小泉『脱原発』のウソ」(飛鳥新社、11月6日発売)など。1937年愛知県生まれ。ハーバード大学法科大学院卒。

 東京電力福島第一原発事故から7年半経ったが、再稼働に漕ぎ着けた原子炉はただ今わずか9基。原発復活の前途は誠に厳しい。3日に閣議決定された第5次エネルギー基本計画では、2030年の原発のシェアは20~22%とされているが、その実現は決して容易ではない。

 そのような状況の中で、日本の原子力発電の基盤に関わる現行の日米原子力協定が7月16日で当初有効期間の30年を満了し、自動延長された。

(Evgeny Gromov/GettyImages)

 周知のように、日本はすでに原子力発電所の使用済燃料を再処理して得たプルトニウムを合計約47トン所有している。うち約10トンは日本国内に、残りの約37トンは、委託再処理先の英仏両国に保管されている。プルトニウムは核爆弾の原料にもなり得る機微な物質なので、全て厳重に管理されており、国際原子力機関(IAEA)の厳格な査察下に置かれている。決して裸のまま放置されているわけではない。

 他方、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場が予定よりさらに3年遅れて2021年に竣工し、本格稼働を始めれば、年間約8トンのプルトニウムが生成される。当面プルトニウムはウランと混ぜたMOX燃料(いわゆるプルサーマル)として普通の原子炉で燃やすが、それで消費されるプルトニウムの量が充分になるまでの一定期間、在庫量は増えることとなる。 

 このことから、内外の反原発団体は、国際的な疑惑を招かぬために、日本はプルトニウムをこれ以上増やすべきではない、在庫量の上限を決めるべきだ、六ケ所工場は不必要だから廃棄せよなどと声高に主張している。さらに、彼らは、日米原子力協定で認められている再処理権自体を放棄すべきだとして、協定の自動延長に反対している。米国でも、反原発派や核不拡散論者は日本の再処理に批判的だが、それは実際にはごく一部の人々の主張であって、原子力重視の立場に立つトランプ政権や知日派の人々は、日本の再処理の必要性に理解を示している。

 そもそも、この再処理権は長年の日米友好関係の中で、日本のエネルギー安全保障の観点から特別に認められてきたもの。筆者は当時初代の外務省原子力課長として一連の日米交渉を直接担当したから、これは確言できる。自動延長された日米協定下でも当然再処理は、日本側の計画とニーズに従って粛々と行われるべきである。

 日本政府が今後原発全廃を決めるようなことがあれば話は別だが、予見しうる将来、原子力を再生可能エネルギーと並ぶ重要なエネルギー源として利用し続ける方針を確立している以上、再処理とプルトニウム利用政策は是非とも堅持すべきものだ。第5次エネ基本計画でも明記されているように、再処理は、資源の有効利用のほかに、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減等の観点からも必要だ。青森県下の関係自治体も六ケ所工場の意義を認め、その早期稼働を辛抱強く期待している。

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