2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2018年7月26日

タワマンの長期修繕費の実態

 さらに、老朽化マンションには「建設当時は適法だったが、その後の法改正により違法となり、これまでと同じ容積率で建て替えることができなくなった既存不適格物件が多く存在するという。東京都内では1970年以前の建設で67%、71~75年で65%もあり(国交省調べ)、これらは建て替えが極めて困難」とみる。

 建て替えには難しい条件があるため、マンションの区分所有権を解消し、敷地を売却して終止符を打つという方法がある。

 だが、これについても米山氏は、

 「区分所有権解消には全員一致が必要という条件がネックになる」

 と問題点を指摘する。

 購入したマンションに死ぬまで住むつもりの人もいれば、短期間住むだけであわよくば転売しようと考えている人など、住民の意識も様々な中で、区分所有権解消というような重大な議題で全員一致により意見をまとめるのは事実上、困難なのが現状だ。東日本大震災で被災したマンションの場合、全壊判定されたマンションでも解体できない問題が浮上したため、5分の4の賛成で区分所有権解消が可能となったが、一般のマンションでは5分の4の合意を得るのも容易ではない。

 米山氏は、

 「マンションの老朽化で心配なのが長期修繕費が十分に積み立てられているかどうかだ。中でも懸念されるのが、2000年代以降に大量供給された20階以上のタワーマンションだ」

 と指摘する。マンションは一般的には12年~15年に一度大規模修繕をしなければならなくなる。もしこれを怠ると、マンションは急速に劣化して資産価値が下がってしまう恐れがある。

 「タワマンの場合、高層であるため足場を組んで修理ができない。屋上から吊り下げるゴンドラを使っての修理となるため、強風が吹くと工事ができないなどで修理期間が通常のマンションよりも長くかかることなので工事費がかさむ。初期に建てられたタワマンとして話題になった埼玉県川口市にある『エルザタワー55』(1998年完成、55階建て、650戸)では昨年までに第1回目の長期修繕を終わったが、12億円掛かったという。

 幸い、この費用居住者の積立金で賄えたが、十数年後の2回目の大規模修繕はより多くの費用が掛かるため、修繕積立金を値上げしなければならなくなるだろう。その前に出ていく居住者もいるだろうし、資金の確保が難しくなる可能性がある」

 タワマンは眺望が良いことなどから2000年以降に人気を集め、東京都の湾岸部などを中心に400棟以上が建てられ、今後も100棟余りが計画されている。タワマンを購入して長期間住むつもりの人は、大規模修繕費用の負担を考慮した上で済む覚悟が求められている。


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