田部康喜のTV読本

2018年7月25日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

青春はまっすぐである

 青春ドラマを観る楽しみのひとつは、若い俳優たちがさまざまな作品に起用されるたびに演技者として成長する姿である。

 チアダンス部の設立に必要な残り2人を演じるのは、不登校の柴田茉希役の山本舞香と、「委員長」と呼ばれる秀才の桜沢麻子役の佐久間由衣である。茉希(山本)は、夜の歩道でビルのガラスに向かってストリートダンスでヒップ・ホップを黙々と踊っている。

 麻子(佐久間)の父は、通っている福井西高校の教頭・桜沢伸介(木下ほうか)。スマートフォンでAKBの歌とダンスを秘かに観ている。

 わかばたち6人のメンバーは、1学期の終業式の最後にチアダンスを披露することを許される。ただし、メンバーが集まらなければ、その時点で部の設立の夢はついえる。

 「HOPE & DREAM」の曲に乗って、ダンスが終わると正面の壁から大きな幕のような布が天井から降りてくる。「Rockets」――それは、彼女たちのチームの名前である。「JETS」のジェット気流を超えるには、ロケットだという意味だった。

 舞台の上からメンバーを募る、わかばと汐里に生徒たちは冷笑と沈黙で答えた。ひとりの女生徒が胸を張って大股で舞台に歩み寄る。不登校の茉希(山本)である。

 「委員長」の麻子(佐久間)が福井弁で大声を放つ。

 「7人では足らんの。なので、私が8人目になります。私も一緒に踊りたい」

 ふだんの秀才の麻子には似合わない、唐突なチアダンス部入りに生徒たちから笑いがもれる。

 わかば(土屋)が叫ぶ。

 「ちょっとそこ。笑わんといてくれるか。人がやりたいこと笑うな」

 青春はまっすぐである。自分はどうだっただろうか。胸の奥が引きちぎられるようなセリフである。

 麻子役の佐久間由衣は、連続テレビ小説「ひよっこ」(2017年度上期)の集団就職で電機メーカーに勤めながら女優を目指して、その夢を実現した助川時子役でブレークした。「シグナル」(カンテレ、2018年)のなかで、薬物依存から脱して中華料理店で懸命に働いていながら連続殺人鬼の犠牲になる、少女役も心に残る。

 茉希役の山本舞香は、最新ヒット映画「恋は雨上がりのように」(2018年、永井聡監督)のなかで、ヒロインの小松菜奈が右足のけがで100m走の高校記録を持ちながら、競技生活を断念しているのに対して、ライバルとして闘いを挑む女子高校生役を演じた。目に力があり、映画館の観客たちが息を飲むのがわかった。
 

  
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