2024年4月25日(木)

From LA

2018年7月27日

米国の矛盾点が浮き彫りに

 一方でMGMに事件の責任を負わせるのは無茶だ、という意見もある。野外コンサートでは当然入り口でセキュリティチェックはされており、犯人は会場内にいたわけではない。日本で新幹線内で殺人事件が起きた時、入場での手荷物検査の必要性が叫ばれたが、結局不可能、という判断になったと同様に、ホテル宿泊客の手荷物を全て検査するのは不可能に近い。そもそもネバダ州ではホテルに銃を持ち込むことは違法ではない。

 今回MGMに賠償責任が問われれば、全米のホテル業界は震撼するだろうし、野外コンサートを開くことを躊躇するイベント会社が出てくるかも知れない。これまで映画館、バーなどで銃乱射事件が起きたことがあるが、こうした場所では特にセキュリティチェックがされないこともあり、訴訟対象となってきた。しかし米国のように銃乱射が高い頻度で起きる社会では、どこかで歯止めをかける必要があるのもまた事実だ。

 今回のケースは米国の矛盾した点が浮き彫りになった、とも言える。一つは極端な訴訟社会であり、巨額の賠償が罷り通っている、という点。そしてこれだけ銃乱射事件が起きても銃規制が進まない、という点だ。今回の訴訟に関してはMGMよりもまず犯人に大量の武器を販売した銃砲店や銃のメーカーが槍玉に上がっても良いのだが、銃による事件が起きても銃のメーカーは完全に守られているのが米社会の不思議な点でもある。

 国家安全保障省がどのような決断を下すのか、訴訟の行方は、など史上最悪の銃乱射事件はまだまだ解決に時間がかかる。

  
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