科学で斬るスポーツ

2018年8月2日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

大ケガ克服の裏にも

 順調に五輪連覇に向け、歩んでいたところに思わぬ壁が立ちはだかった。本番3カ月前の2017年11月に行われたNHK杯直前の公式練習で、羽生は右足首の靭帯を損傷した。本人はもちろん、周囲にも大きな衝撃が広がった。予想以上にケガは重く、NHK杯をはじめ、その後の大会出場を回避。五輪出場さえ危ぶまれた。

 しかし、羽生はここでくじけなかった。五輪連覇への執念が上回ったと言えよう。氷上に戻ったのは、けがから2カ月後の今年1月初め。痛みはもちろん、筋力の低下などが懸念されたが、それは杞憂だった。

 休養中も陸上での体幹トレーニングを続けていた。食事も、けがの治癒に欠かせないたんぱく質を多めにとり、特にBCAA系はしっかり摂取するよう心がけていたという。

 栗原さんは「けがの回復には、しっかりたんぱく質をとることが重要などと、やりとりした。しかし、あとは本人の問題。本人が、食事の重要性を認識し、できることを可能な限り準備してきた結果」と語る。

 氷上での滑りを始めたことで、下半身と上半身の筋力のバランスが整っていくことになる。陸上のトレーニングはどうしても上半身優位になりがちだったからだ。

しっかり食べて本番に力発揮

 氷上での練習再開したものの、実際の演技は五輪がぶっつけ本番となった。そのため平昌入り後も、食事メニューも飽きがこないよう、変化をつけながら楽しく食べられるように工夫された。試合本番の2月16日に向け、13日までは疲れた筋肉を回復させるためにたんぱく質を多めの食事、そしてその後の試合直前は筋グリコーゲンを増やす、炭水化物などを多めにしたエネルギー強化食が組まれた。

図2 羽生選手が、平昌五輪直前に食べていたメニューの一例。16日のSPの3日前の13日は回復期で、たんぱく質強化食。前日の15日はエネルギー強化食だった(提供:味の素(株))写真を拡大

 すべてが公表されてはいないが、リカバリー(回復)期の13日に出されたたんぱく質強化食は図2の左。朝食はおにぎり、卵焼き、ソーセージ、みそ汁(豆腐、ネギ)、昼食は豚丼、ほうれん草と人参のナムル、くずし豆腐と豚コマ切れの薬膳スープ、夕食はブルコギ、豆もやしとこんにゃくのナムル、カラダコンディショニング鍋。

 SP直前15日のエネルギー強化食は図2の右だ。ごはんは三食しっかり食べ、副食として、朝食はニンニクとバターでいためた「ガリバタポテト」ゆで卵、味噌汁(キャベツ、えのき)に、果物。昼食は「味しみ肉豆腐」、カボチャ煮、「カラダコンディショニング(野菜だし)鍋」、夕食は豚の生姜焼き、ブロッコリーにピリ辛炒め、そしてエネルギー豚汁といった具合だ。

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