Washington Files

2018年7月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 すでに米国内外で大きく報じられた通り、トランプ大統領は去る16日首脳会談終了後の共同記者会見で、ロシア疑惑について、これを否定するプーチン大統領に歩調を合わせるかのように「いま隣にプーチン大統領がいるが、彼は強い調子で否定している・・・私はこれだけは言っておきたい。(犯行が)なぜロシアなのか、理由がわからない」といったんは否定した。

 しかし、この件についてはすでに、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、FBI(連邦捜査局)がそろって「ロシアが米大統領選挙に介入した」と断定する報告書を公表した後だっただけに、「ロシアの諜報機関KGB出身のプーチン氏の主張にくみし、自国の情報機関の調査報告をないがしろにするとは国家反逆的行為だ」との猛烈な批判が米マスコミのみならず、米議会でも与野党双方から噴出した。

支持者の多い鉄鋼関係者の前で演説をするトランプ大統領(AP/Aflo)

 このためトランプ氏はヘルシンキから帰国翌日、ホワイトハウスで報道陣に対し、「言い間違いだった。(犯行が)なぜロシアでないのか、理由がわからない、と言うべきだった」

 として前言を翻した。ただ、アメリカ主要メディアの圧倒的多数は、初めの記者会見での問題発言前後の脈絡からみて、この訂正発言はたんなるその場しのぎのとりつくろいにすぎず信用できない、と懐疑的に受け止めている。そしてその後も、ワシントンでは、トランプ氏がプーチン氏との共同記者会見の場で卑屈で怖気づいたような態度を示したことの背景について、さまざまな憶測が広がっている。

 「大統領はプーチンに操られたのだ。プーチンは超一流の操り手(master manipulator)にほかならない」

 米下院外交・国土安全保障委員会の有力メンバーであるブライアン・フィッツパトリック議員は22日、NPR公共放送局インタビューでこう語った。同氏は与党共和党議員であるばかりか、以前はFBI特別捜査官としてロシアによる対米情報活動を監視してきた経験があるだけに、この発言は注目を集めている。

 彼はさらに「私はヘルシンキでの二人の発言と表情をテレビで見て、わが国の大統領が彼(プーチン)に見事に操られていると判断した。正直、見ていて吐き気を催すほどだった」とも語った。

 同じ共和党下院議員でCIA工作員を務めたこともあるウイル・ハード氏も20日、ニューヨーク・タイムズに特別寄稿し、この中で「私は永年、CIA秘密工作員として、ロシアの秘密情報機関が数多くのアメリカ人を手玉にとって操るのを監視してきたが、まさかわが国の大統領がそのうちの一人になる日がやってくるとは、想像さえしなかった。大統領がわが国の情報機関による徹底した調査結果を否定したこと自体、プーチンの手玉にされていることは否定できない」と述べたばかりだ。

 一方、野党民主党ではほとんどの議員たちが、これと同様の見方をとっていることはいうまでもない。

 では、もしかりに、トランプ氏が“プーチンの操り人形”であったとした場合、その背景にあるものは一体何なのか。

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