Washington Files

2018年7月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

新たな二つの動き

 こうした中、大統領の納税申告問題をめぐって、新たに二つの動きが出てきた。

 一つは、米議会の一部議員の間から、問題となったヘルシンキ米ロ首脳会談との関連で、トランプ大統領がプーチン大統領に卑屈な態度をとった疑問を解くカギとして、トランプ氏が大統領に成る以前からのロシア関連の財務内容を知るために納税申告書の公表を求める声が出てきたことだ。ビジネス取引で大統領がロシア側に隠された負い目があるのではないか、という疑いからだ。

 まず、下院歳入委員会委員のビル・パスカル議員(民主)は首脳会談2日後の去る18日、「大統領には説明責任がある。当委員会としても、わが国最高司令官がプーチンに籠絡されてしまったのかどうかについて究明しなければならない」との声明を出したのに続き、翌19日、上院でもロン・ワイデン議員(民主)が財務委員会の席上「トランプ氏は過去40年以上にわたり歴代大統領が行ってきた税申告の公表を一人拒み続けているが、ヘルシンキで米国民に恥をさらした以上、もはや看過することは許されない」と語った。シェルドン・ホワイトハウス上院議員(民主)も「なぜ大統領がヘルシンキであのような屈辱的発言をせざるを得なかったのかについては、自らの税申告内容の公表によって明らかになる」として大統領に早期公表を要求した。

 もうひとつは、ロシア疑惑調査が大詰めを迎えつつあるとされるロバート・モラー特別検察官の動きだ。

 同特別検察官は過去1年以上に及ぶ極秘捜査を通じて、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)工作員12人のほか、トランプ・ファミリーと深い関係にあった実業家13人合わせ25人ものロシア人を起訴している。しかし最近になって、ついに捜査の手をトランプ大統領の納税申告内容に伸ばし始めたか、すでにこれら書類をIRSから入手したとの観測が広がり始めた。

 結局、ロシア側が2016年米大統領選で、自国にとって好ましくないヒラリー・クリントン民主党候補を退け、都合のいいトランプ氏を当選させるために具体的にどんな介入工作をしたかを解明する究極のカギは、トランプ氏本人の資金の流れを示す過去の納税申告内容にあると判断したからではないか、との見方だ。

 ただ、かりにモラー氏らの特別捜査チームがすでにこれらを入手したとしても、大統領本人が自らの意思で公表しないかぎり、国民にただちに真相が明らかにされるわけではない。さらに、ホワイトハウス関係筋の間では、大統領は、自分の納税関係書類が検察当局に渡ったと判明したその時点で、同特別検察官の解任に踏み切る、とのうわさまで出ている。

 果たしてモラー氏は、最終捜査結果をいつの時点で司法省に提出し、そのうちどの程度の内容が国民に知らされるのか、ロシア疑惑問題はいよいよ重大な局面を迎えようとしている。

  
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