BBC News

2018年7月30日

»著者プロフィール

米紙ニューヨーク・タイムズの社主は29日、ドナルド・トランプ米大統領と会談した際、報道記者を「国民の敵」と呼ぶべきでないと伝えたことを明らかにした。メディアに対する「暴力につながる」と警告したという。

トランプ大統領は29日、ツイッターで「ニューヨーク・タイムズの社主A.G.サルツバーガーとホワイトハウスでとても良い、興味深い会談をした。メディアが載せる大量の偽ニュースや、偽ニュースが『国民の敵』という表現に形を変えたことについて長い間話し込んだ。残念だ!」と書いた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1023546197129224192

トランプ氏は、自分自身が「国民の敵」というフレーズを繰り返し使っていることには触れなかった。その後のツイートでは、メディアがその報道を通じて国民の命を危険にさらしていると非難した。

大統領のツイートを受けて、ニューヨーク・タイムズは「会合について大統領の説明の仕方に答える」として声明を発表した。それによると、ホワイトハウスに招待されて今月20日にサルツバーガー社主が大統領を訪問し、非公式に会談した。大統領が報道に敵対的な言動を繰り返していることを「深く憂慮」していると、本人に直接伝えるため、会談に応じることにしたという。

ニューヨーク・タイムズの説明によると、サルツバーガー氏は会談でトランプ氏に、「偽ニュース」という表現は「事実に反し有害」だが、それよりも「ジャーナリストに『国民の敵』とレッテルを貼っていることの方がはるかに問題だ」と伝えたという。

「こうした言葉遣いは火種になり得る。ジャーナリストを今まで以上に脅かし、暴力につながると警告した」とサルツバーガー社主は声明で説明した。

社主はさらに、こうした懸念は他国では特に大きく、他の独裁政権がトランプ氏の物言いをジャーナリスト弾圧に利用していると大統領に伝えたという。

「命を危険にさらし、米国の民主主義の理想を破壊し、発言の自由と報道の自由という米国の特に偉大な輸出品を損なっていると警告した」と社主は説明した。

サルツバーガー氏はトランプ大統領に、ニューヨーク・タイムズの報道内容の批判をやめるよう求めたわけではなく、「ジャーナリズム全般への攻撃を考え直して」ほしいと求めたのだと書いている。

サルツバーガー氏の声明発表後、トランプ大統領は内容に反応するかのようなツイートをした。「トランプ錯乱症候群で頭がおかしくなっているメディアが、政府内部の話し合いを明らかにすれば、ジャーナリストだけでなく、本当にたくさんの命を危険にさらすことになる! とても非愛国的だ! 報道の自由は、報道する責任も伴う」と非難した。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1023646663590797312

続くツイートでは、「(政府の)前向きな成果のことさえ、悪いニュースとして書く」と批判している。

トランプ大統領による「国民の敵」ツイート

2017年2月、トランプ大統領は「偽ニュースメディア(失敗しているニューヨーク・タイムズやNBC、ABC、CNN、CBS)は僕の敵ではなく、米国民の敵だ!」とツイートした。その後の会合でもこのフレーズを使ったと報じられている。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/832708293516632065

違法移民の子どもを親から引き離す政策が物議をかもした今年6月にもツイッターで、「なぜFBIは偽ニュースのメディアにたくさん情報を流しているんだ。FBIはそんなことするべきではないし、国民の敵の偽ニュースのことだ、話をいいようにねじ曲げる。やつらに真実は関係ないんだ!」と、「国民の敵」という言葉を使った。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1008506045373845504

7月初めにロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談を批判された際にも、「実際、ほとんどのニュースメディアは国民の敵だ」、「ロシアとの首脳会談は大成功だった。そう言わないのは、本当の国民の敵、偽ニュースメディアだけだ(後略)」とツイートした。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1018530173006692352

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1019936133147516929


<解説>新しい「普通」――アンソニー・ザーカーBBC北米記者

トランプ大統領が初めて報道機関を「国民の敵」と呼んだとき、大きな怒りが噴出した。共和党のジェフ・フレイク上院議員(アリゾナ州選出)はホワイトハウスが報道の自由を攻撃した「前例のない」発言だと呼んだ。

しかしトランプ氏がこのフレーズを二度、三度と使ううちに、肩をすくめる人さえ減っていった。許しがたいものだったはずの行動や意見を新しい「普通」にしてしまうという、この大統領特有の能力だ。

だが、このフレーズがニュースのトップを飾らなくなっても、ジャーナリストは今でも言われるたびに意識している。数週間前に起きたメリーランド州の新聞社襲撃は、欧米で確立している「安全な」民主主義においても、報道という職業の危険性を浮き彫りにした。

サルツバーガー氏は9日前、この点を明らかにするためにトランプ氏と秘密の会談を行った。

しかし、そのメッセージは受け取ってもらえなかったようだ。29日のツイートでトランプ大統領は、自分がメディアを「米国民の敵」と表現するのはメディア自身の責任だと示唆した。

トランプ大統領にとっては、こうした表現の問題は(もし実際に問題だとするなら)、正すべきは自分ではなくメディアの方だということになる。


(英語記事 NYT urges Trump to end 'enemy' rhetoric

提供元:https://www.bbc.com/japanese/45001963

関連記事

新着記事

»もっと見る