ちょっと寄り道うまいもの

2011年5月31日

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 たまには甘いもののお話も。

 そう考えたら、浮かんできた情景がある。絵に描いたような萱葺き屋根がある農村の風景。そして、そこで作られる甘いもの……。

 思い出すと矢も盾もたまらず、新幹線で岡山。そして、マリンライナーに乗り継ぎ、そこに向かった。

 和三盆〔わさんぼん〕。

 主に四国の徳島県、香川県で江戸時代から作られてきた砂糖である。中国からのそれを唐三盆と呼んだのに対して和の三盆という説もあるが、おそらくは盆の上で三度研ぐことから、その名があるらしい。

 いま、普通に使っている真っ白な砂糖とは違い、ほのかな黄色、あるいは灰色がかっている。私には無漂白のコットンのようにも、艶っぽい人肌のようにも見える。

 砂糖というと、「そんなもの」と馬鹿にされるかもしれない。その昔、如何に貴重なものであったかという話は置いても。

 しかし。落雁と同じようにして型で作られた「型もの」など口に入れたら、言葉を失うはずだ。ほろほろと口の中で崩れ、溶けていくその甘みの心地よさ。何という上品な甘さ。

 良く出来た和菓子の美味しさは、洋菓子のそれとは違う魅力があるが、その根源が和三盆によるということが、そのまま食べても納得出来るはずだ。というよりも、そのままで上質な和菓子。

 その和三盆を昔ながらの製法で作り続けているのが、「岡田製糖所」である。以前、ほかの真っ当な調味料、食材を作る生産者から紹介され、訪ねて唸ったことがあった。左党も唸る砂糖などと馬鹿なことをいった。久しぶりの再訪である。

歴史を感じさせる岡田製糖所

 もともとは、農家の冬場の副業だったために、何代目かも分からないのだが、江戸時代のご先祖から作っていたらしいという社長の岡田和廣さんが、改めて説明しつつ見せてくれた。

 使う材料は近くの農家で作る竹糖〔ちくとう〕という品種。台湾や沖縄のそれとは違う、姿も細く比較的背の低いサトウキビである。水はけがよく日照も良い地の利で、江戸時代から作られてきた。とはいえ、国外から安い砂糖が入り、価格競争では勝てぬもので、一般的な用途としてのそれは消えた。本当の産地といえば語弊があるか、まあ、本当の適地にだけ、今は残っているということだ。

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