世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月7日

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 7月16日、第20回EU中国首脳会談が北京で行われた。出席者は、EU側がドナルド・トゥスク大統領とジャン=クロード・ユンケル欧州委員長で、中国側は李克強首相だった。会談後、ユンケル欧州委員長とトゥスクEU大統領は、それぞれ以下のようなことを述べた。

(Poike/RomoloTavani/Hung_Chung_Chih/GlobalP/iStock)
ユンケル欧州委員長
・私は、EUと中国とのパートナーシップの潜在力を信じる。そしてその関係は今日の世界で、かつてないほど重要になっている。

・中国とEU合わせて世界経済の3分の1を占める。欧州は中国の最大の貿易相手であり、中国は欧州の第二の貿易相手である。両者のモノの輸出入は、毎日15億ユーロ以上ある。

・昨年のみでも、欧州は1980憶ユーロ相当のモノと380憶ユーロ相当のサービスを中国に輸出した。これは両者に雇用と成長をもたらし、貿易パートナーとしての潜在力を示した。

・欧州の中国への外国直接投資は、2017年に60億ユーロと落ち込んだ。逆に、中国は昨年、欧州に300億ユーロ以上投資した。この差異は、外国企業が中国で投資する際に直面する規制や、行政手続の問題に関する投資家の懸念を反映する。
トゥスクEU大統領
・EU中国の戦略的パートナーシップを進展させることで合意した。

・北朝鮮問題は、朝鮮半島の完全な非核化を目指し、平和的解決を支援する。

・イランの核合意を継続して遵守して行く。

・米露首脳会談がヘルシンキで、同時に開催されている。米露欧中で、世界を良くするための秩序を構築する共同の責任がある。

・WTOの改革を進めることで一致した。考えを同じくする諸国で、産業補助金、知的財産権、技術移転の強要等を含む問題を解決できる機関に改善することが重要である。

 7月16日、EU中国首脳会談は44項目にもわたる共同声明を発出して終了した。共同声明には、気候変動とクリーン・エネルギーに関する附属文書もあった。では、具体的に何が決まったのか。共同声明は包括的なものであるが、ほとんどが抽象的で、継続協議、具体的に大きな取引があったわけではない。

 実際、EUは29か国(英国を除くと28か国)の大所帯であり、中国が得意とするのは、1か国ずつに働きかけて取引することである。そのかいあり、上記でユンケル欧州委員長が指摘するように、中国にとって欧州はもはや最大の貿易相手国となった。

 外国直接投資の分野でも、昨年の中国からEUへの投資は、EUから中国への投資の6倍を超えるようになった。どちらが先進国かと思わせるような状況である。特に、中国は中東欧16か国との協議の枠組みを作り、積極的にそれらの諸国に投資をしている。チェコのプラハには中国人が住む地区が出来、スイスでは多くの学校が中国人経営だと言われる。

 日米欧は、中国からの投資の大きさと自国企業が中国に進出した場合の不公正で不自由な状況とのギャップに対して、何か対処をしなければならないとようやく危機感をもつようになった。

 今回、EUと中国はWTOの改革の必要性で一致したが、その考えは随分、異なるようである。中国は、欧州と米国(西側)の分断を試みているようであるが、逆に、EUはトゥスク大統領が述べるように、産業補助金、知的財産権の侵害、技術移転の強要等、中国が行っている不公正な慣行をただすための機関としてWTOの改革を望んでいる。WTOの改革が進むとは、なかなか思えないが、日米欧等の自由民主主義、法の支配を重んじる諸国が共通認識を有して対処することは、世界経済の発展のためにも重要だろう。
 

  
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