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2018年8月6日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 このところ世界中で導入の必要性が叫ばれるユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)という考え方。政府が一定の収入を全国民に保証する、というものだ。テスラ社のイーロン・マスク氏が「AIやロボットによって人々が職を失うことになれば、導入する必要性がある」と口にして話題になったほか、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏も以前からこうしたシステムは必要、としていた。

(stevanovicigor/Gettyimages)

 しかし、昨年ひっそりとUBIを導入した自治体が、3年間のテスト期間を2年も繰り上げて今年やはりひっそりと廃止していたことが明らかになった。カナダのオンタリオ州だ。

 オンタリオがUBI導入を決定したのは昨年夏のこと。北米としては初の試みだったが、対象となったのは全州民ではなく貧困層、とされる4000人。しかも週内のハミルトン、サンダーベイ、リンゼイという3つの市が選ばれ、そこに住む18歳から64歳の住民、また低所得である人々がランダムに選ばれてアプリケーションを提出、その後審査を経て対象となる、というちょっと変わった形式だった。選ばれた人々は低所得者層や生活保護世帯など様々な背景を持ち、3年間に渡ってUBIを得るが途中で辞退もできる、という内容。

 オンタリオではこのパイロットプログラムに1億5000万カナダドルを充当し、「社会の先行き不透明さにUBIを役立てることができるのか」を検証することを目的としていた。対象者が受け取れる金額は独身者が年間1万6989カナダドル(約145万円)、夫婦世帯が2万4027カナダドル(約206万円)と政府が定める貧困層レベルの収入だが、これに加えて失業や子供手当なども普通に受け取ることができる。また、低所得であっても働いている世帯の場合、収入1ドルにつき50セントが引かれる、という設定だった。

 対象となった人々は政府によって生活などをモニターされ、UBIが暮らしにどう関わるのか、生産的な結果をもたらすのか、などが検証される。この制度を導入したのはリベラル派の自治体政府で、昨年の時点では今年予定されていた中間選挙でもリベラル派が勝利を収める、と予測されていたのである。

 ところが今年の選挙で勝ったのは保守派だった。そして選挙後に政府がまず発表したのがUBIの廃止。理由は「コストがかかりすぎ、継続性が見込めない」ためだという。その代わりとして新政府は「ガソリン価格の上昇を抑え、政府支出の無駄を省くことで人々の暮らしを守る」という公約を出した。

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