2024年4月20日(土)

百年レストラン 「ひととき」より

2018年8月24日

外観は京町家そのもの

 皇族や国賓をもてなす味とはどういうものか? 1頁目に紹介している牛肉の煮込みは、デミグラスソースを用いている。このソースは3週間もかけて牛スジや野菜を煮込み、2週間寝かしたうえで仕上げるという。そう聞くと濃厚だろうと予想するが、決してしつこくない。雑味がなく食べ終わった後にパンで皿を綺麗に拭き取ってしまうくらい美味いが、主張は控えめ。あくまで肉の魅力を引き立てる脇役としての立場にとどまっている。これが正統派の味だ、という説得力があった。

 店舗は平成13年(2001)に大和大路新橋に移転。さらに平成25年に祇園に移り、店名を「ぎをん萬養軒」とした。

 この店舗は、なんと築百年以上の京町家を改装したもの。観光客がひっきりなしに通る花見小路通沿い、祇園甲部歌舞練場の向かいに建つ。外観は京町家そのもののため、入口に出されたメニューを見ない限り、ここがレストランであることに気づかないだろう。

 「京町家に魅力を感じていましたので。〝洋館にシャンデリア〟のイメージが変化したことを残念に思われる方もおられたかもしれませんが。祇園でやる以上、京都の伝統や歴史もきちんと学んだうえで新しいことに挑戦することが大事だと感じています。料理も、守るものと変えるものを見極めないといけません。伝統の味は変えず、一方で盛り付けや提供方法を工夫していきたいと思います」

イベリコ豚のローストと信州サーモンのミキュイ。昨年昇格した長谷川料理長は「火入れ加減は前のシェフに習った通りに。野菜の盛り付け方で個性や時代を表現したいです」

ぎをん萬養軒
<所在地>京都市東山区祇園町南側570−120
京阪本線祇園四条駅から徒歩約5分
<営業時間>
11時30分~15時(LO 14時)、17時~22時(LO 20時30分)
<定休日>火・水曜
<問い合わせ先>☎075−525−5101

写真・伊藤千晴

  
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◆「ひととき」2018年8月号より

 

 

 

 


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