使えない上司・使えない部下

2018年8月9日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

自分に再投資する。このサイクルをいかにつくるか…

星野晃一郎さん

 世界の主要国では、労働時間は減る方向にあります。この数百年を振り返ると、大量生産がスタートする前は、農業が中心の時代でした。ある頃から、鍬(くわ)を使うようになる。そして農機具がつくられ、機械化が進む。農作業者の労働時間は減っていく。この流れは、これからも止まらないでしょうね。大切なことは、減った時間をどうするのか、という発想です。

 労働時間が減ることで、その時間で何かを新たに学び直す。こういう社員が増え、チームや部署、会社全体のレベルが上がり、新しいサービスや商品ができる。このサイクルが必要なのです。政府や経済界、会社、社員個々は、ここまで描くべきなのです。

 働き方改革で注目される副業や兼業も、その文脈で考えるべきでしょうね。有識者の間ではこういう議論がされているのでしょうが、多くの会社員に浸透はしていないように見えます。いかにクオリティーの高いものを出していくか。そこへのアプロ―チが必要です。会社員の側からしても、「残業代が減りました」ではうれしくはないでしょう。ほかの会社で通用しうる経験やノウハウがあったとしても、評価されない。

 私は、ワーク・ライフ・バランスの内容や目的を初めて知ったのが2009年でした。そのとき、中小企業では絶対にできない、と思いました。当社は、それよりも10年程前から社員たちと話し合い、就業規則を随時、改訂してきました。状況に応じて、在宅勤務や副業、労働時間の大幅な削減などに取り組んできたのです。

 多くの中小企業では、こういう試みは相当に難しいはずです。ワーク・ライフ・バランスで謳われる労働時間の削減や副業・兼業をルールとして各企業に持ち込もうとすると、大企業はともかく、中小企業はまず持たない。たとえば、役員や管理職がいて、その下にヒエラルキーがあり、全体を統制しようとすると労働時間の削減は難しい。管理職のあり方などを変え、一般職との関係をもっとゆるいものにして互いに歩み寄る組織作りをする。このことが、本来は前提になるはずです。

 ところが、数値目標をして「ここまで労働時間を削減するように」と管理職やその下の社員をガチガチに管理する。これでは、どこかにしわ寄せがいくはずです。そりゃそうですよ、労使関係をはじめとする経営者の考え方が変わっていないから…。従来の労使関係を大胆に変えるべきなのに、そこを変えない。

 働いている人も、変わらなきゃいけない。休暇が増えたら、一層にクオリティーの高い仕事ができるように、自分をブラッシュアップするべきです。自分に再投資する。このサイクルをいかにつくるか…。これは、世界中で起きていることです。日本の場合、基本的に働くということに対して突き詰めて考えていないんじゃないかな。

 これからは、冒頭でお話したような阿部勇樹選手のような発想の柔軟さ、視野の広さを持たないといけない。日本は資源がないから、日本人の頭脳をもっとうまく利用し、切れ味もより一層よくして世界と競い合いをしないといけない。そのためにも、「労働時間の削減」のところで思考を停止してはいけない。今の議論は、どこかで間違っているんじゃないでしょうか。

 さらにいえば、想像力を生かすポイントの1つが、リスク回避。最悪の状態を想像できるからこそ、手が打てる。ペシミスティックだからこそ、楽しく生きられる。たとえば、日本は災害大国なのにBCP対策がほぼできていない。働き方もですが、生き方そのものがおかしいのではないかとも思いますね。

  
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