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2018年8月8日

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ドナルド・トランプ米大統領は7日、イラン制裁再発動に伴い、「イランとビジネスをする者は誰だろうと、米国とビジネスできない」とツイートした。米国のイラン核合意離脱による影響は、すでに市民生活を直撃している。

トランプ政権は日付が7日に変わると共に、イランに対する米国独自の経済制裁の一部を再発動させた。5月にイラン核合意を離脱したことに伴い、6日が猶予期限だった制裁を再発動する大統領令に、トランプ氏が署名した。今回再開した制裁では、イランによる米紙幣購入や貴金属・鉄鋼、自動車部品などの取引が制限される。11月5日には、イランによってさらに影響の大きい原油やエネルギー取引が対象になる。

制裁再発動後、トランプ氏は「イラン制裁が正式に発動した。今までで最も厳しい効果のある制裁で、11月には次の次元に強化される。イランとビジネスをする者は誰だろうと、米国とビジネスできない。僕は世界平和を求めている、それ以下は認めない!」とツイートした(太文字は原文では大文字強調)。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1026762818773757955

トランプ氏は6日には、イランが「威圧的で地域を不安定にする態度をやめて、再び世界経済の一部になるか、あるいは経済孤立の道を進み続けるのか」、選ばなくてはならないと述べた。

イランのハッサン・ロウハニ大統領は同日、米国が「外交に背を向けた」と批判。トランプ政権の動きは「イラン国民の間に分断の種をまく」狙いの「心理戦」だと反発した。

「(米国は)イランの国に対して心理戦を開始しようとしている」、「制裁つきの交渉など理屈に合わない。我々は常に外交と話し合いを支持する(中略)しかし、話し合いには誠意が必要だ」とロウハニ大統領は述べた。

欧州は対抗措置

欧州連合(EU)は引き続き、核合意の取り決めを順守する姿勢で、トランプ政権の制裁再発動を批判。イランと「正当なビジネス」をしている企業の保護を約束している。

EUと英仏独3カ国の外相は6日、イラン核合意は依然として世界の安全保障に「不可欠」なものだと共同声明を発表した。EUはさらに7日から、イランと商取引のある欧州企業を守るため、米国の制裁再開に対する対抗措置を発動した。米制裁によってEU企業が受ける損失を補償するほか、欧州企業による米国制裁の順守を基本的に禁止する。

アリスター・バート英中東担当相はBBCに、「米国の制裁を受けて、自分たちの会社に法的措置や強制措置がとられるのではと心配する会社があるなら、EU法に関して言えばその企業は保護される」と述べた。

バート氏はさらに、イランは単に次の米選挙まで「戸締りをしっかりして待機」するだけだろうと話した。

一方で、ドイツの自動車大手ダイムラーは、イランとの共同事業を昨年発表していたが、今週になってイラン国内での活動を停止したと明らかにした。

再発動した制裁の内容は

トランプ政権は今年5月、包括的共同作業計画(JCPOA)とも呼ばれるイラン核合意から、一方的に離脱した。イラン核合意はバラク・オバマ前大統領の政権が交渉したもので、国際社会の制裁解除と引き換えにイランが核開発を制限するという内容だった。

トランプ氏はかねてからこの合意内容を「一方的」、「見たことないほど最悪」と批判していた。制裁解除よりも、経済圧力の強化を通じてイランに新合意を受け入れさせるほうが得策と主張している。

5月の合意離脱に伴い、トランプ政権は制裁再発動に90日と180日の猶予期限を設けた。今回が最初の期限切れで、トランプ氏の大統領令によって、7日午前零時1分に第一弾の制裁が再発動した。制裁対象には、以下が含まれる――。

  • イラン政府による米紙幣調達
  • 金など貴金属の取引
  • 工業用に使われるグラファイト(黒鉛)、鉄鋼、石炭、ソフトウェアの取引
  • イラン通貨リアル関連の取引
  • イラン国債発行に関する活動
  • イランの自動車部門

次の制裁再発動は11月5日で、イランのエネルギーと海運部門、原油取引、外国金融機関によるイラン中央銀行との取引など、よりイラン経済に影響が大きい内容が対象となる。

イラン経済への影響は

イランでは昨年12月からすでに、経済停滞に伴う物価や失業率の上昇などのために異例の反政府デモが起きている。水不足に対する市民の不満も高まり、今年6月に首都テヘランで起きた抗議行動は、首都で2012年以降最大のものだったと言われる。

イランの経済停滞とトランプ政権の強硬姿勢がどれだけ関係しているか、判断するのは難しいが、イラン通貨への影響は確実にある。5月の核合意離脱宣言以降、イランのリアルは50%近く暴落している。

リアル急落対策としてイラン政府は5日に外貨取引規制を緩和。それ以降、リアルは約20%回復している。

イラン国民の多くは、安全措置として金を買いだめしている。そのためテヘランでは金価格が過去最高値に上昇している。

次回の制裁再発動で米国がイランの原油取引を禁止すると、国民生活への影響はより厳しくなる可能性がある。イランは日量約200万バレルを輸出しているが、制裁によってこの約半分が影響を受ける見通しだ。イランは石油産業を維持するため、中国やロシアへの販路を見出そうとするかもしれない。

国際通貨基金(IMF)は今年3月、イランの純外貨準備高は今年中に978億ドルに減り、輸入代金の13カ月分しか決済できなくなると見通しを示した。BMIリサーチのアナリストは、イラン経済は2019年に4.3%縮小すると予測している。

一方で、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」で「イランの未来イニシアチブ」を担当するバーバラ・スレイビン氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに対して、経済制裁による打撃が大きいと一般市民は政府に「完全依存」することになるので、経済制裁は得てして独裁政権崩壊にはつながらないと見解を述べている。


若いイラン人はどう思っている

米国の経済制裁が再発動されるのに伴い、BBCペルシャ語は若いイラン人に話を聞いた。制裁再開を見越してイラン経済はすでに失速しており、若者の多くはその影響を実感している。

「僕は家電メーカーでマーケティングに従事していたが、会社が部品を輸入できなくなって、解雇された」とペイマンさんは話した。

航空宇宙技師のアリさんも、13年務めた会社が部品を輸入できなくなり、失職した。「家族を支えるため、今はタクシーの運転手をしている」と言う。

給料が給料日に支払われず、やりくりに苦労しているという人も大勢いる。

建設作業員のアリさんは、13カ月も賃金を受け取っていないと話した。医師のオミドさんは、家賃の支払いと結婚資金の貯金のために残業していると言う。

多くの人が、希望を失いつつあると話す。サマさんは、下がり続ける為替レートのせいで自分の実質給料は半年前の半分だと話した。

「家を買うとか、いい車を買うとか、今ではもう夢のような話です。私のような者にとっては、いい携帯電話を買うのも、もうすぐ無理になってしまう」

(英語記事 Iran sanctions: Trump warns trading partners

提供元:https://www.bbc.com/japanese/45107762

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