WEDGE REPORT

2011年6月7日

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 復興を長期的に支えていくために、被災地の雇用を守ることは重要だ。働きたくても、仕事がない。日増しに高まる被災地のそんな声に応えたいと、「自分にできることは何か」を考え、立ち上がった人たちの熱い想いに迫った。

 「マークさんに、海外で最初のお客さんになってもらいたい──」。5月24日、六本木で行われたセールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEOの来日会見で、特別ゲストとして登壇した茨城県つくば市の市議会議員・五十嵐立青氏(32)は、日本人らしからぬオーバーアクションとユーモアを交えつつ、被災地の農産物を購入するようマーク・ベニオフ会長に要請した。マーク氏は頷き、二人は固い握手を結ぶ。会場からは、一斉に拍手が沸き起こった。

風評被害の野菜をネットで販売

 茨城県産の野菜を「イバベジ」、福島県産の野菜を「フクベジ」と称し、県が安全と認めた野菜を詰め合わせた野菜ボックス(1箱2,000円:送料別)を販売するのは、つくば市で障害者が働く農場を運営するNPO法人「つくばアグリチャレンジ」。

茨城県産の野菜ボックス(イバベジ)

 「農産物サポートプロジェクト」と名付けられたこの取り組みは、原発事故の影響で買い手のつかなくなった野菜を農家から直接買い取り、インターネットで販売するというもの。販売金額の8割が農家の手に渡り、2割が手数料となる。野菜を出荷するのは、良いものをつくるために努力や工夫を惜しまない茨城の15農家と福島の8農家。購入者は北海道から九州に至るまで、すでに4,000人を超え、リピーターも1,000人近くに上るという。

 つくば市大曽根からイバベジにトマトを出荷する根本農園の根本優雅里氏は言う。「震災前は、市場に1箱1,500円で出荷していたものが、震災後には300円まで値下がりしてしまったんです。でも、イバベジは震災前と変わらない価格で買い取ってくれました」。根本氏のもとには、ツイッターなどを通じて全国から感想や励ましのメッセージが寄せられた。イバベジがきっかけとなり、県外からの直接注文も舞い込むようになった。

 このプロジェクトの発起人であり、NPO役員の久野康治氏(42)は確信する。「消費者の声を直接聞けることで、農家の皆さんにも大きな励みになっているはずです。価格決定権がなく、消費者の声も聞けなかった既存の流通体制を大きく変革するチャンスが訪れています」。

続々と集結する民間の力

 震災直後から、福島からの避難民受け入れに奔走していた久野氏はある日、農家がトラクターで畑を潰しているのを見て、言いようのないショックを受けた。「茨城は関東一円の台所。風評被害であればなんとか買い支えてあげたい」。3月28日、つくば市議でNPO理事長でもある五十嵐氏に相談。現地の直売所と競合しないよう、対象が全国に広がるネット販売の導入を決めた。

井戸英二氏(左後)、久野康治氏(右後)、USEの平岡由美子氏(左前)

 翌日、NPO役員でインテル社員の井戸英二氏(41)も加わり、ツイッターで販売告知したところ、たった一晩で100人を超える買い手が集まった。その後、プロジェクトがテレビや新聞で紹介されるにつれ、4月中旬からGWにかけては1日300箱もの出荷作業に追われた。だが、大量の受注に出荷現場が対応しきれなくなり、GWが明けてまもなく受注を一旦停止。プロジェクトを継続していくにはシステム強化が不可欠と判断し、5月20日にセールスフォース・ドットコムのベンダーであるUSEに受発注システムの構築を依頼。すると、USEはたった4日間という異例のスピードでシステムを組み上げてくれた。

⇒次ページ 震災後、初めて気持ちが前向きになれたんです

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