世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月29日

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 ドイツでは最近、NATOやドイツを軽視したり威圧したりするようなトランプの多くの発言を受け、核保有についての議論が目立つようになって来た。そうした中、ヴォルフガング・イッシンガー元駐米ドイツ大使は、ドイツの核保有に反対する論説をProject Syndicateに寄稿、8月8日付けで掲載されている。論説の概要は以下の通り。

(SiberianArt/leonello/_Runis_/kloromanam/iStock)

 ドイツの核保有の支持者は、トランプの発言のせいでNATOの核の傘の信頼性は全く失われた、と主張するが、ドイツにとり核保有の選択肢が向こう見ずである3つの大きな理由がある。

 第一に、ドイツは、1969年の核不拡散条約署名(後に批准)、1990年の2プラス4条約(注:東西ドイツ統一に向けた、両独と米ソ英仏間の条約)など、繰り返し核兵器を拒絶してきた。こうしたコミットメントに疑いを抱かせることは、ドイツの名声と信頼性を深刻に傷つける。NATOの核の傘、ひいてはNATO同盟自体、核不拡散体制全体への信頼性にも疑問を投げかけることになる。

 第二に、ドイツが核を保有すれば、欧州の安全保障環境にダメージを与え、ドイツにとりマイナスとなる。ロシアは、ドイツの核兵器獲得への動きを同国への直接的な脅威と解釈し、軍事的対抗措置を執るだろう。独仏間を含む、欧州内のパワーバランスを変え、EUの長期的な調和に重大な結果をもたらすことにもなろう。

 第三に、核兵器の追求は、ドイツ国民の強い反対に遭うであろう。

 欧州の核防衛を強化するには、ドイツの核兵器を導入するより賢明な方法がある。例えば、フランスは米英と並んで核の拡大抑止の役割を果たしてくれるかもしれない。これには、フランスの核戦略を根本的に再考し、「欧州化」する必要があるだろうが、ドイツその他欧州諸国は、欧州防衛同盟の文脈で、そうした取り組みに資金的貢献し得る。これが長期的には最善の選択肢であろう。

 トランプが何を言おうが、ドイツは予見しうる将来にわたり、米国の核の傘に依存し続けるであろう。

 NATOの信頼性を維持し、米国に真剣に受けとめてもらう最良の方法は、防衛費をGDP比2%にする約束の達成に真摯に取り組み、通常戦力にもっと投資することである。

出典:Wolfgang Ischinger,‘Germany’s Dangerous Nuclear Flirtation’(Project Syndigate, August 8, 2018)
https://www.project-syndicate.org/commentary/germany-nuclear-weapon-debate-by-wolfgang-ischinger-2018-08

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