オトナの教養 週末の一冊

2018年8月24日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 「アメリカは非常に動的な社会」と語るのは、アメリカに居を構えるお茶の水女子大学ジェンダー研究センター元教授のホーン川嶋瑤子氏。確かにアメリカ発の「#me too」運動は、世界的な広がりを見せており、過去を振り返っても、公民権運動をはじめ、さまざまな運動がアメリカでは展開されてきた。一方で、現在のトランプ大統領は差別的な話題を振り撒いている。過去と現在、同国では、一体何が起き、その背後には何があるのか。『アメリカの社会変革』(ちくま新書)を上梓した同氏に話を聞いた。

(robertiez/iStock/Getty Images Plus)

――今回の本では、アメリカでのさまざまな社会運動を取り上げながら社会の動向や歴史的展望が紹介されています。こうした動きを1冊の本にまとめようと思ったのはなぜでしょうか?

川嶋:日米を往復していますが、アメリカは非常に動的、可変力のある社会だと感じます。可変的な社会は人々に活力や能動的姿勢を与えます。たとえば、不平等や差別の強い問題意識が、平等を求める大きな運動を生み出しました。人種差別反対の公民権運動以降、女性、年齢、ハンディキャップ、LGBT等による差別反対のさまざまな運動が起こりました。最近の「#me too」運動もそうです。これは、採用や昇進、賃金の性差別だけでなく、セクシュアル・ハラスメントやレイプ等も蔓延しているにもかかわらず、多くが沈黙のなかで隠されてきたのですが、ネット上の書き込みサイトが作られ、発言の場として広がったものです。

 一見、別々のように見える個々の運動は実はつながり影響しあっています。いろいろな運動がどのようにして起こるのか、運動を推進する力は何か、どのような理論が説得力を得て世論を動かすのか、メディアの力や判決のインパクト、文化や教育の力などの要素も考えながら、社会変化を総合的に分析しようと思いました。

――現在アメリカ在住ですが、日常のなかで動的だなと具体的に感じることはありますか?

川嶋:スタンフォード大学やシリコンバレー近郊の同じ地域で長く生活していますが、この辺は技術革新の中心地であり、新しい産業、企業の誕生と成長、グローバル化がもたらす変化をひしひしと感じます。

 移民の流入は、社会を変える大きな力ですね。住民の人種構成は急激に変化してきました。私の近隣の住民もインド系、中国系が増え、近隣の公園では、かつて白人親子が圧倒的に多かったですが、今ではアジア系親子が多数です。優秀な公立学校がある地域には、特に子どもの教育を重視する韓国や中国などのアジア系移民が集中する傾向があります。生徒の人種構成も大きく変わりました。地域の土地家屋の価格や家賃が上がり、生活費全般も上昇し、前からの住人は他の地域へ流出する傾向にあります。昔の移民は貧困から抜け出すためにアメリカへ渡って来ましたが、現在の移民、特にシリコンバレーで働く人たちは裕福な人たちが多いのです。

 サンフランシスコ湾岸地域では、アジア系人口が20~30%にまで増加しています。中国系の大きなショッピング・センターは増えているし、韓国系、インド系、最近は東南アジア系のレストランが増えています。

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