ちょっと寄り道うまいもの

2011年6月30日

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 カレーが格別に美味しい季節。久しぶりに食べたいと、頭に浮かんだものがある。 「志摩観光ホテル」の伊勢海老カレー。

 大ぶりの伊勢海老が、豪快に美しく一人前に一尾入っている。見えているだけでも。

 もとより、それなりのお値段である。が、こんな時期だからこそ、たまには経済活性化に励まねばと自分を納得させ、志摩に向かう。

 そもそも。歴史を見ると、日本人にとってのカレーはご馳走ではなかったと思われる。明治時代に西洋料理として紹介されたが、その時点から庶民にも手の届く楽しみだった。だからこそ、学校の寮、あるいは軍隊のメニューとなり、一般家庭の味となる。

 特にインスタント化が進んだ戦後は、日常そのものとなる。学生食堂で財布が寂しいと食べるもの。母親が夕食のメニューを思いつかないときの苦し紛れ。アウトドアの定番。

 改めて考えてみると、そこそこの食材を、それなりに食べられるものにしてしまうところが、カレーという料理の凄さだと気づかされる。だからこそ、国民食にもなったのだろう。  しかし、その逆、極上の食材を活かした、最高の料理としてのカレーはあり得ないのか。どこのホテルのレストランでも、メニューの中では安い方だが、究極のご馳走としてのカレーも可能ではないか。食べてみたい。  ある時、そんなことを考えた。海の幸といえばここしかないというホテルに、雑誌の企画として、相談した。

 そこで「こんなものでは?」と作ってくれたのが、伊勢海老のカレーだった。圧倒された。私だけが唸っているのはもったいない、メニューにと進言した。以来、隠れ名物とでもいうべきものとなった。それを久しぶりに思い出し、また、食べたくなったのだ。

 志摩観光ホテルは『華麗なる一族』の舞台として有名で……などと今さら説明の必要もないだろう。戦後日本のリゾートホテルの草分けである。今では「クラシック」と呼ぶ元々のホテルに加え、「ベイスイート」と呼ぶ新棟も建っている。まさに今という時代のセンスのリゾートホテル。

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