WEDGE REPORT

2011年6月21日

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 まず、第3条ただし書きの適用をめぐり、冒頭の政府の姿勢が顕在化した。海江田万里経済産業大臣は「(原賠法の立法時には)『人類が予想もつかない』との解釈だった」と発言。枝野幸男官房長官も免責を早々に否定した。

 これに対し、民法・環境法が専門の森島昭夫・名古屋大学名誉教授は疑問を投げかける。「立法時に海江田大臣が言う解釈なんて存在しない。当時の科学技術庁長官は国会で第3条ただし書きの意味を『関東大震災の3倍以上』と答弁しており(編集部注:東日本大震災のマグニチュードは関東大震災の約40倍)、確定的ではないが目安となる。少なくとも、ただし書きの適用について専門家による議論を経ないのは、法治国家としてどうなのか」。

 この議論がなされたとして、その結果、災害の範囲が、今回の賠償スキームの前提(図2)に定められたとしよう。この段階で問題になるのは事業者の負担額。前述のとおり、現在は東電など事業者の全額負担だが、ここに政府の責任逃れ第2弾が仕込まれている。それを理解するには原賠法の立法過程を振り返る必要がある。

 同法立法に際して設立された原子力災害補償専門部会(部会長・我妻栄・東京大学名誉教授〈故人〉)は、「原子力事業者に重い責任を負わせて(中略)被害者を泣き寝入りさせることのないようにするとともに原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないよう」「損害賠償措置によってカバーしえない損害を生じた場合には国家補償をなすべき」と答申した。政府の金銭的負担を明示していたわけだ。

 しかし、国の財政負担が膨大になることを恐れた政府は、実際の法律を曖昧な表現に変えてしまった。事業者の負担を定めた原賠法の第16条は、次の内容となった。

 原賠法第16条「政府は、事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、事業者に対し、必要な援助を行うものとする」(要約)。

 ここで言う「法律の目的」とは「被害者の保護」のほかに「原子力事業の健全な発達」がある(同第1条)。第16条に記された政府の「必要な援助」は、現スキームのような資金の貸与ともとれるし、答申の趣旨である金銭的な負担と解釈することもできる。図2で示した米国の法律の明快さに比べると、違いがよくわかる。

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