世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月12日

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 8月12日、トルコのエルドアン大統領は、通貨リラを安定化させるために必要とされる政策金利の引き上げ措置を行わないと、自らの演説で強く語った。また、国際通貨基金(IMF)の支援に関しても要請する気がないことを宣言した。これらのエルドアン大統領の決断は、トルコ経済のみならず、国際金融市場にもマイナスの影響を与えかねない。では、トルコの経済危機はどの程度、欧州や他の新興諸国、ひいては世界経済に波及するのだろうか。

(BalkansCat/sumnersgraphicsinc/VeroRo39/iStock)

 トルコの通貨、経済危機がトルコ一国にとどまるのか、それとも新興諸国などに拡散するのかについては、専門家の見方が分かれている。トルコ・リラの下落に伴い、トルコに対して債権を有するスペイン、イタリア、フランス等に影響を与え、ユーロ危機から世界的経済に打撃を与えかねないという悲観的見方がある一方、トルコ通貨の波及効果は少なく、たとえトルコがデフォルトしても、アルゼンチンの時のように世界的影響は少ないという楽観的見方もある。これら両方向の見方があるということは、すなわち、将来の見通しが困難であることを示している。

 例えば、8月19日付のワシントン・ポスト紙で、コラムニストのロバート・サミュエルソンが、「トルコで起きていることはトルコで留まるか?」と題する論説で、このことを指摘している。

 『トルコ経済は世界のGDPの1.4%にすぎず、世界に影響を及ぼすには小さすぎる』という見方に立って考えるとすると、ピーターソン研究所の経済学者フレッド・バーグステンが言うように、「それは主として トルコの問題である」となる。 しかし、経済学者皆がそう考えているわけではない。AEIのデズモンド・ ラックマンは、トルコは債務不履行になり、そこから資本逃避が起き、世界経済と米国経済に負の影響を与えるだろうと言っている。多くの経済学者が一致しているのは、トルコはIMFの支援を必要としているという点である。しかし、エルドアン大統領はIMFの支援は政策の手を縛るものであるとして、受けることに抵抗している。結果として大きな危機が起こりかねず、注視する必要がある。

 現在リラは小康状態にあるが、問題はトルコの対外債務が巨額に上り、リラの暴落で債務の返済が困難になり、債務危機に陥る危険があるということである。 このような危機に対処するため、トルコはIMFの支援を要請すべきである。 

 しかし、トルコのエルドアン大統領はIMFへの支援要請について、「政治的主権を放棄するのか」と述べ、否定的である。カタールがトルコに対し150億ドルの支援を約束したが、本年第一四半期で4667億ドル、GDPの53%に達するトルコの債務から考えれば、焼け石に水である。

 中国がどの程度の支援をするのか分からないが、IMFの支援に取って代わるような支援をすることは考えられない。 

 これらを鑑みると、トルコの通貨危機は債務危機を招くおそれがあり、そうなった場合は、トルコの経済危機はトルコ一国にとどまらず、新興諸国をはじめ世界に影響を及ぼさざるを得ないのではないか。

 エルドアンは金利の引き上げやIMFの支援要請といった正統的な政策を排除しているが、特にIMF支援の拒否についてはその傾向が大きく、このまま拒否し続ける場合、トルコの経済危機の拡散の恐れは大きいと言わざるを得ないと思われる。

  
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