食の安全 常識・非常識

2011年6月24日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

 今、出荷されている野菜は、フォールアウトが盛んだった当時、まだ植えられていなかったか、小さかったものがほとんどです。したがって、放射性物質の付着は少ないとみられます。また、土壌に落ちた放射性セシウムが農産物の根から吸収される可能性はありますが、作物によって吸収する力が違うとみられ、農水省は5月、作物ごとの吸収しやすさ(移行係数)を公表しました。生産者は、吸収しにくい作物を栽培するなど対応しています。

 また、家畜については、放射性物質に汚染された飼料(牧草など)や水を与えなければ、肉や牛乳の汚染をかなりの程度、防ぐことができます。生産者は輸入飼料に切り替えるなどしており、肉や牛乳も放射性物質不検出が続いているのです。

 ただし、水分を多く吸収し急激に生長するタケノコや、永年作物である果樹、お茶などが、野菜や家畜などに比べて管理が難しいのは事実です。これらは慎重なモニタリングが必要で、その結果、規制を講じられています。

 こうしたことが消費者、市民に知られていません。どうも、検査に対する誤解が大きいように思えます。「検査対象となっているのは市場に出回っているものだけ」と誤解している人もいますが、摂取や出荷制限がかかっている地域の産品、つまりは高汚染の可能性のある農作物に対しても行われています。制限が解除されるためには、1週間ごとに検査し、3回にわたって暫定規制値以下となることを確認しなければなりません。生産者は出荷したければ、あるいは出荷できなかった場合の賠償をしっかりと受けたいと思えば、産品を検査してもらうしかないのです。福島県では、主な産地で定期的に検査が行われています。にもかかわらず、不検出が続出している、というのが農作物の実態です。

福島県沿岸部では、漁業は再開されていない

●は暫定規制値を超過したもの、○は暫定規制値以下
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 水産物の検査については、水産庁がまとめており、6月20日現在、615検体の検査結果が公表されています。

<水産庁のまとめた検査結果>
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/pdf/110615_kekka_jp.pdf

 そのリストを見ると、事故当初は暫定規制値超えが目立ちます。大気中に放出された放射性物質が海に大量に落ちたと見られ、福島県や茨城県で海の表面にいるコウナゴ(イカナゴ)が暫定規制値を超える例が数多く出たのです。

 しかし現在、放射性物質が検出されているものの多くは福島県産。原発から汚染水が出たのですから、福島県の被害は深刻です。それ故に、同県沿岸部では未だ、漁業は再開されておらず、調査捕獲は行われていますが、出荷されていません。

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