名門校、未来への学び

2018年10月1日

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鈴木隆祐 (すずき・りゅうすけ)

ジャーナリスト

1966年長野県生まれ。法政大学文学部在学中より出版社で雑誌編集を始め、その後フリーに。著書に『名門高校人脈』(光文社新書)、『名門高校 青春グルメ』(辰巳出版)ほか。

教科書を勉強するだけじゃダメ

 辻野さんは慶大在学中、イリノイ大に留学し、大学院修士課程修了後の1984年にソニーに入社後も、カリフォルニア工科大学大学院で電気工学を修めるなど、国際的なキャリアを切り拓く下地を着実に築いていった。

 「当時は国際教育といった雰囲気はまだそれほどなかった。学大附高も英語に取り立てて力を入れていたわけではなかったと思う。でも、ともかく伸び伸びとしていたね。元々学校に来る連中がそんな環境で育ってきたからかな。

 担任だった数学の根本伸司先生は口調も独特で、わかりやすい授業だった。教科書とは別の問題集を渡してもらった。倫社の先生も旧仮名遣いで板書をする変わり者。『先哲に学ぶ』というレポート課題で、ダ・ヴィンチの研究をしたら、えらく褒めてくれた。受験に関係ない科目でみんなサボりがちなのに、不思議と印象に残っている。試験も難しくてね。教科書をただ勉強していればいいという学校じゃなかった」

 根本元教諭はロシアの高名な数学者、アンドレイ・コルモゴロフの『確率論の基礎概念』を翻訳した人物だ。昔からそれだけの教員を擁しているのが、学大附高の強みだろう。倫社の件も、サムライ的な気概を持った経営者である辻野さんの資質を思うと、孤高の教諭の放つメッセージに呼応せずにはいられなかったのかと察する。

 今回の学附高の取材写真を辻野氏に見せると、「僕は剣道部だったけど、野球部の連中と仲がよくてね」と目を細める。

「女子の制服姿、懐かしいな。昔と変わらない。僕の学年でも女子がみんな優秀でね。公務員とか士業、結婚しても働き続けている人が多い。還暦を過ぎた今になって会うと、女性パワーをいっそう感じますよ(笑)」

 女性のパワフルさは精神科医の香山リカ、元フジテレビアナの平井理央、テレビ朝日アナの竹内由恵、最近とみに話題の衆院議員の山尾志桜里、SKE48の惣田紗莉渚といったOGの顔ぶれを見てもわかるだろう。

 現に不思議とこの度「探究」を取材しても、女子生徒の課題への取り組みがビビッドで、ついフォーカスもしていた。辻野さんの発言を聞いても、これからの男女共同参画社会を占う意味で、同校の伸び伸びとした教育のあり方を、今度はOGを通じて確認もしたくなるのだった。

写真=Wedge編集部(辻野氏写真は本人提供)

Wedge10月号「名門校、未来への学び」では、
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◆Wedge2018年10月号

 

 

 


 

 

 

 

 


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