WEDGE REPORT

2018年9月18日

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野辺継男 (のべ・つぐお)

名古屋大学未来社会創造機構客員准教授

 名古屋大学未来社会創造機構客員准教授。1983年日本電気入社。2000年同社退職後、複数ベンチャーを立ち上げ、その後、日産自動車などを経て現職。

 米国アリゾナ州では年内にもウェイモ(Waymo)による「無人運転」の配車サービスが開始される。「移動革命」の始まりだ。クルマはモビリティサービス(MaaS)を提供する〝箱〟になり、シェアリングカーと公共交通機関の間で利用者の奪い合いも起きるだろう。すでに自動車・鉄道・IT事業者による「新しい移動」の主導権争いが始まっている。
自動運転技術に自信をみせる米ウェイモのジョン・クラフチックCEO(最高経営責任者)(BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 米アルファベット子会社で自動運転技術を開発するウェイモ(Waymo)は、2018年内に、緊急の場合のみ自動運転に介入するバックアップドライバーがいない「完全無人」の自動運転でオンデマンドの配車サービスを始めると発表している。

 これまでウェイモは、サービス開始に向けて着々と準備を進めてきた。昨年4月からアリゾナ州フェニックスで一般ユーザーを募り、通学・通勤、買い物等の日常生活に自動運転車を利用してもらう商用テストを開始した。今年1月には「完全無人」でのテストも開始している。

 ウェイモはアリゾナだけでなく、カリフォルニア州でも完全無人の公道テストを行うため、車両管理局(DMV)からの承認を待っている。つまり米国では、今後ウェイモがサービス開始を望む都市における連邦および州の法律が整備されれば、UberやLyftが提供するような配車サービスが完全自動運転車で開始される。

 ウェイモは今年3月に、今後約2年間で欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のミニバン「パシフィカ」を6万2000台、英ジャガー・ランドローバーのSUV「Iペース」を2万台購入する契約を結んだ。この「8万台」の発注は、ウェイモの完全無人の自動運転に対する自信の表れとみることができる。8万台を発注してバックアップドライバーが必要だとすると、1日2交代制でも16万人を雇用することになり、それは現実的でない。

 また、これには、完全自動運転サービスに必要なデータ収集のほかにも狙いがあると、私は考える。

 現状、自動運転については、何を基準に「十分」安全と言えるのか、それを規定し実世界で証明することは難しい。現実的には、人間の運転による10億キロ程度の走行距離と自動運転の公道上の実走行距離における死傷事故の発生回数の比較が検討されている。

 ウェイモは現在、パシフィカをベースにした完全自動運転車を用いて米国25都市で完全自動運転の公道テストを行っている。7月、その走行距離について、ウェイモの前身となるGoogleが2009年に公道テストを開始して以来、累計800万マイル(約1300万キロ)を走行したと発表した。

(出所)ウェイモHPの資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 最近は毎月100万マイルとさらに走行距離を伸ばしているが、今年初めの段階での「600台が3カ月で100万マイル」を基準として、単純に8万台に拡大すると、ウェイモの完全自動運転での公道走行距離は2年間で約10億マイルになる。

 多様な走行条件を含むシミュレーションに加え、これだけの距離を走行すると、偶発的な事象も経験でき、人間の運転と比較可能な土俵に乗る。完全自動運転での死傷事故数が人間の運転を数倍下回れば、完全自動運転車や、それを用いたモビリティサービスの商用化が全米で認められる公算が大きい。

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