2024年4月20日(土)

日本を味わう!駅弁風土記

2011年7月11日

 駅弁の名前に付いている「湖」とは、当たり前のことであるが琵琶湖を示す。滋賀県の面積の1/6を占める日本最大の湖は、その東西南北の沿岸で表情や性格を異にしており、湖東、湖西、湖南、湖北と呼び分けられている。「湖北(こほく)」と呼ばれる琵琶湖の北側は、日本海に最も近い側であり、京都や大津の古都や市街から時間的にも距離的にも最も離れたエリアであり、平地も人口も少ない地域である。

 だから、使い古されたフレーズであるが、湖北は琵琶湖の周りでは、日本の原風景がより残っている地域である。そんな琵琶湖北部の村に住むおばあちゃんが、囲炉裏端で子供たちにお話を聞かせているようなほのぼのとした光景が、この駅弁のコンセプトだという。

米原駅弁の顔

 1987(昭和62)年に国鉄の分割民営化で誕生したJR東海が、東海道新幹線「こだま」とその停車駅の活性化を目的に、新横浜から新大阪駅までの各駅で一斉に生んだ駅弁シリーズ「新幹線グルメ」の一員という、新生や新時代にふさわしい駅弁シリーズの米原駅版は、生まれながらにして婆さまであった。

 「湖北のおはなし」は、話題と売り上げを獲得した新幹線グルメの中でも、筆頭格の人気を集めたと記憶している。米原駅弁の顔であった1937(昭和12)年生まれの名物駅弁「元祖鱒寿し」を押しのけ、新幹線グルメというシリーズのくくりがなくなった現在においても、看板の駅弁としてビジネスマンから行楽客まで様々な鉄道旅客に旅情と郷愁を提供する。湖北に生まれた駅弁は、琵琶湖であまり知られていないかもしれない魅力の一面を映している。

福岡健一さんが運営するウェブサイト「駅弁資料館」はこちら
⇒ http://eki-ben.web.infoseek.co.jp/


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