今月の旅指南

2011年7月20日

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狩野直美 (かのう・なおみ)

東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

 うなぎの養殖で全国的に知られる愛知県西尾市一色町(いっしきちょう)が大いに賑わうのが、毎年8月26日と27日に行われる大提灯まつりの時期だ。諏訪神社の境内に巨大な提灯が掲げられると、時代をさかのぼったような歴史絵巻の世界が広がる。日が落ちると提灯に明かりがともり、賑やかに露店が並ぶ光景にはどこか懐かしさが漂う。

大提灯の明かりが境内を照らし、行き交う人々の歓声が響く

 「大提灯まつりは、提灯が主役の静かなお祭りです。そのなかで見どころとなるのは、御神火を大ろうそくに移し、提灯に火を入れる献燈祭(火入れ式)です。また、お祭りの朝に組んでおいた屋根、そして提灯を引き上げるところも、興味深いのではないでしょうか」

使用するろうそくも長さ1.2メートルと巨大だ

 と話すのは、諏訪神社宮司の山口倫弘(みちひろ)さん。かつて毎夜現れては田畑を荒らし、人々や家畜に危害を加える海魔を退散させるため、諏訪大社より御分霊を受けて社を建て、そこで大きな篝火(かがりび)を一晩中たいて祈願したのが、祭りの起源とのこと。それが寛文年間(1661〜1673年)に、篝火から提灯を献燈する現在の形に変わったという。

 大提灯は6組の地区の氏子が1対ずつ奉納するもので、全部で12張ある。いずれも神話や史実に基づく勇壮な絵が描かれ、文字が添えられている。例えば大宝(たいほう)組の八咫烏(やたがらす)の図は、熊野の山中で道に迷った神武天皇を道案内する八咫烏を細かいタッチで描いたもの。一方、中組の大提灯には天岩戸の図が描かれている。

 「それぞれの提灯には、絵の中心になっている場面が必ずあるので、そこから全体を見るとよいでしょう。何が描かれているのかが分かると面白みも増すと思います。ゆっくりと提灯の絵を眺めるには、昼間に来るのもよいですよ」

 大提灯の大きさは一番大きい間浜(まはま)組のもので、全長10メートルにも及ぶ。かつて、氏子たちの間で大きさの競い合いが激化したことから、西尾藩が寸法制限令を出し、違反した組の世話役が入牢となる事件も起きた。時を経て代々伝わる巨大な提灯に込められた、熱い思いを感じてみたい。

大提灯まつり
<開催日>2011年8月26~27日
<会場>愛知県西尾市・諏訪神社(名鉄西尾線西尾駅からバス)
<問>0563(73)4276
http://www.town.isshiki.lg.jp/oochouchin/top/

 

◆ 「ひととき」2011年8月号より

 

 

 

    

 
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