世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月1日

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 ミャンマーにおけるロヒンギャ問題をはじめとする人権問題は、極めて深刻である。ロヒンギャはミャンマーのラカイン州に居住するイスラム教徒であるが、彼らはミャンマーの憲法上ミャンマー国民であることを認められていない。とりわけ、昨年8月にロヒンギャの反政府武装勢力が攻撃を仕掛けたのをきっかけに、ミャンマー軍はロヒンギャに対する「掃討作戦」をエスカレートさせている。ロヒンギャの多くが難民となり、隣国バングラデシュには100万人にのぼるロヒンギャ難民が避難しているとされる。

(sezer66/Fabianodp/iStock)

 こうした状況を受け、8月27日、ミャンマーの人権問題を調査した国連の調査ミッションの報告が公表された。調査ミッションはミャンマーへの入国を認められなかったが、国外に逃れた避難民からの聞き取りを含む数百件の取材に基づき、丹念に証拠を集めたようである。この報告は「犯罪捜査と訴追を正当化する国際法の下における重大な犯罪が行われたという合理的根拠がある」と結論付けた。

 同報告は、ミャンマーでなされた犯罪について、3つのことを述べている。ジェノサイドについては、その意図の有無が重要だとした上で、「ラカイン州で起こったことは他の状況下でジェノサイドの意図と認定されたことと類似性がある」と、いささか回りくどいことをいっている。人道に対する罪は、これを認定している。戦争犯罪については、その要素(殺人、拷問、略奪、強姦、性的暴力など)がある、と述べている。犯罪の否定と常態化、犯罪が罰せられないまま見過ごされる状況には衝撃的なものがあるとも述べている。ラカイン州での事件について、同報告は、ミン・アウン・フライン最高司令官を含む国軍の高官6名を名指しして、その責任を負うべきであるとしている。なお、報告は、ロヒンギャの側にも残虐な行為があったとしている。

 その上で、同報告は、国連安保理が問題を国際刑事裁判所に付託し、あるいはアド・ホックな国際法廷を設けて責任を追及することを勧告している。また、安保理が責任のある個人を対象に旅行制限、資産凍結などの制裁を発動することも勧告している。

 一方、9月3日、ミャンマーの裁判所は、昨年の12月以来拘束されていたロイター通信の二人の記者に対し、禁固7年の有罪判決を言い渡した。彼らは、ラカイン州の北部のイン・ディン村で、ミャンマー軍がロヒンギャの男性10人を処刑した件について証拠を集めていた。つまり、今回の国連報告の対象となるようなロヒンギャ弾圧の実態を調査していたわけである。両記者は、国家機密の文書を所持していたとして逮捕されたが、警察当局の罠であるとして無罪を主張していた。

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