世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月2日

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 中国は、蔡英文政権発足後の台湾を外交空間から排除しようとしている。ここ2年余りの間に、台湾を外交的に承認していた5か国に台湾との国交を断絶させ、台湾承認から中国承認に切り替えさせた。蔡英文総統の中南米訪問直後の8月21日に発表されたエルサルバドルと台湾との断交(9月13日付け本欄『台湾とエルサルバドルの断交、中国の圧力と米国の非難』)が、最新の事例である。その結果、台湾を外交的に承認する国は、今や17か国まで減っている。

(Homunkulus28/olegtoka/Bika_Ambon/iStock

 このような中国の台湾承認国切り崩しに対し、米国は、真正面から対抗するような措置を執った。9月7日、米政府は、エルサルバドルに加え、ドミニカ共和国、パナマに駐在する大使を本国に召還したのである。これらの3か国は、米国の「裏庭」に位置し、最近2年間に台湾と断交した国々である。そして、米国としては、これらの国々との関係を見直す考えであることを表明した。その意図は、中国への西半球への政治的介入の拒否と、台湾支援の二つであろう。

 米国として、これらの国々との関係をどのように見直そうとしているのかはっきりしないが、米国が台湾との関係で大使を召還したのは初めてのことである。大使召還という強い措置は、中国による台湾孤立化政策に対する強い牽制策の一つとなろう。

 他方、米国の対台湾政策で、踏み込みが物足りない分野もないわけではない。まず、「台湾関係法」では、台湾の自衛のために必要な米国からの武器売却が求められている。しかし、目下のところ、14億ドルというオバマ政権時代の売却レベルにとどまっているようである。

 また、6月の、事実上の台湾駐在米大使館に当たるAIT(米国在台湾協会)台北事務所の移転式典の際には、米国の海兵隊が参加し、そのまま海兵隊が事務所の警護に当たるものと一般に考えられていたが、最近の動きを見ると、米国防省としては、中国の強い反発を考慮したのか、海兵隊部隊の台湾駐在を当面は見送ったようである。また、移転式典に米国代表として閣僚級の高官を代表として出席させるのではないかとの事前の予測や米議会親台湾派の要求にもかかわらず、教育文化担当国務次官を派遣したにとどまる。

 米議会は最近、台湾への武器売却以外に合同訓練、演習、米高官の台湾訪問などを検討する「国防授権法2019」を可決、トランプ大統領の署名を得て成立している。また、3月に成立した「台湾旅行法」は、あらゆるレベルの政府間の人的交流を勧奨するものとなっている。これらの法律が求める内容を如何なるタイミングでどこまで実施に移すかは、今後の米国政府の課題である。

 台湾防衛の強化については、中国政府は強硬な威嚇的姿勢を示すことによって米国の動きを牽制しようとしている。例えば昨年12月、在米中国大使館の李克新公使が発言した「米海軍の艦船が高雄に入港する日は、人民解放軍の部隊が台湾を武力統一する日となる」などというのはその類である。

 いずれにせよ、「台湾旅行法」および「国防授権法2019」が成立した結果、今後は米台間の政府高官どうしの交流・接触のレベルは、軍事安全保障面を含め、より高度なものに変わっていくものと考えられる。米国、特に議会の議論を見ていると、共和党、民主党の区別なく、総じて台湾に対し、より同情的な雰囲気が強まっている。米国の台湾寄りの路線が大きく変わる可能性は低いと見ておいてよいであろう。

  
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