2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2018年10月3日

多摩ニュータウン
老朽団地を再生

 そうした困難な条件を克服して東京の多摩ニュータウンにある団地の建て替え・再生を成功に導いたのが鳩ノ森コンサルティングの山田尚之社長だ。1971年に旧日本住宅公団が分譲した「諏訪2丁目住宅」(640戸)の住民のうち92%が2010年に建て替え賛成を決議、築40年以上の老朽団地が1249戸からなる民間分譲マンション「ブリリア多摩ニュータウン」として13年に生まれ変わった。

 エレベーターのなかった5階建ての住宅は、エレベーター付きの14階建てになり、約3000人の多世代が住む新しい街が誕生、団地再生のモデルケースとなっている。

 しかし、諏訪2丁目の事例がどこの団地にも当てはまるかというと、そういうわけでもない。山田社長は成功した要因として「駅から徒歩数分の距離にあるなど立地面で恵まれていた、容積率に余裕があった、リーマンショック後に着工したため工事費が上がらなかった─などの好条件に恵まれたことも見逃せない」と話す。

 全国にある住宅団地は約5000団地(約200万戸)。そのうち、300近い団地が築45年を超え、その数は今後10年で5倍、20年で10倍の3000団地に急増する。にもかかわらず、建て替えられた事例は200ほどしかない。山田社長は「その歩みはあまりにも遅い」と指摘、団地再生のための制度について2つを提言する。

 その一つは、これまで団地再生はほとんどが一括して建て替える方式で行われてきたが、負担をしても建て替えたいグループと修繕改修で十分と考えるグループが両立できる制度の充実が必要だ。もう一つは、すべての団地を建て替えることは需要面からみても不可能なので、「団地に関して区分所有権を解消して、代金を分配する敷地売却制度の適用を早急に考えるべきだ」と訴える。

 国に対しては「建て替えの背中を押すような政策と同時に、老朽化したマンションの再生利用の可能性を広げる政策を進め、建物、敷地の売却に際して、耐震改修を行えば再生利用を可能とし、その上で、住宅用だけでなくホテル、高齢者施設などいろいろな用途に使えるように制限を緩和してほしい」と要望する。


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