2024年4月23日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年7月13日

中国経済の「硬着陸」が現実に

 そうなると、中国政府がインフレ抑制のために実施している金融引き締め政策は予想できる近未来において変更されるようなことは、まずないだろう。実際、中国人民銀行は7月4日、中国経済については「インフレ圧力は依然として高い」との認識を示し、引き続き金融政策運営の軸足を物価抑制に置く方針を強調しているし、中国の温家宝首相も7月9~10日に陝西省の西安などを視察した時、経済政策運営の基本方針について「物価水準の安定を主要な任務とし(現在の)マクロ調整を堅持するという方向は変わらない」と語り、インフレ抑制に軸足を置いた金融引き締めを続ける考えを示している。

 要するに中国政府は今後も金融引き締め政策を継続していくことになるのだが、しかしその結果、景気の後退とそれに伴う経済の減速はもはや避けられない。そしてさらに深刻なことに、去年までの量的緩和によって膨らんできた史上最大の不動産バブルが、まさに今後の金融引き締めのなかで「崩壊」という宿命の結末を迎えることになるに違いない。

 国際社会の一部で囁かれ始めている中国経済のハードランディング(中国語では「硬着陸」)はいよいよ、目の前の現実となりつつあるのである。

 ◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

 


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