Washington Files

2018年10月1日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 新たに指名された連邦最高裁判事をめぐるあいつぐセクハラ疑惑の浮上で大混乱を呈した上院承認審議。だが、全米の女性活動家たちの呼びかけで始まった「#MeToo(私も)」運動は鎮静化するどころか、さらに勢いを増してきており、11月に迫った中間選挙では、女性層の間で批判の多い共和党陣営は苦しい立場に追い込まれている。

 今から11年前に性暴力被害者支援目的でスタートした草の根組織「MeToo」運動は今年9月、トランプ大統領が太鼓判で指名したフレッド・キャバノー最高裁判事(53)の上院承認審議の直前に浮上したセックス・スキャンダルをきっかけに一気に盛り上がりを見せてきた。

ワシントンでキャバノー氏に抗議する女性たち(AP/AFLO)

 疑惑そのものは、同氏が高校3年生当時、女子高生(現在、カリフォルニア州パロアルト大学心理学教授)に民家のベッドルームで襲いかかりレイプしようとしたという未成年時代のエピソードだった。しかし、被害を届け出た女性側が真偽を客観的に証明するためFBIによる事前調査を訴えたにもかかわらず、共和党主導の上院司法委員会がいったんこれを無視し、十分な証拠調べもしないまま承認審議を急いだことから、女性グループによる抗議運動を勢いづかせる結果となった。

 渦中の大学教授と共和党支持派とされるキャバノー氏の双方を招請して行われた司法委員会審議は9月27日、全米注視の中で一部始終がTVで実況中継された。

 トランプ大統領もこの日、公務を中断し、ホワイトハウスの自室にこもってテレビでやりとりを最後まで見守った。審議終了後、自らのツイッターで「キャバノー氏は素晴らしい証言をした。私が彼を最高裁判事に指名したのは正しかった」と自賛した。

 女性グループがとくに今回の最高判事承認審議に異常なほどの関心を寄せたのは、1991年にも、別件のクラレンス・トーマス最高裁判事承認審議でセクハラ疑惑が持ち上がり、女性が被害を訴えたにもかかわらず十分な事情聴取もしないまま上院司法委員会と本会議が拙速な審議をへて承認に踏み切ったという、女性たちにとって“忌々しい記憶”があるからだ。

 当時も審議の模様は実況中継されたが、この時をきっかけに性的被害にあった女性の立場や主張への理解の欠如に抗議する女性たちの社会運動が全米各地にまたまたくまに広がっていった。

 そして翌1992年の中間選挙では女性パワーが一段と盛り上がりを見せ、ダイアン・ファインシュタイン議員(現職)のほか一挙に4人もの女性上院議員を新たに当選させるきっかけとなった。女性5人が同じ年に上院選挙で同時当選したのは史上初の“快挙”とされ、その後今日にいたるまで1992年は「Year of the Woman」として語り草になっている。

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