馬毛島
またもつまずく基地問題


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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(編集部撮影)

 「基地ハンターイ!」。7月2日、鹿児島県の種子島にある西之表市を訪れた防衛省の小川勝也副大臣や中江公人事務次官らの一行を待ち受けていたのは、横断幕を掲げ怒号をあげる住民たちだった。前日に鹿児島に入り、朝一番の高速フェリーで着いたばかり。わざわざ種子島まで赴いたのは、西之表市の沖に浮かぶ無人島に自衛隊基地を建設する計画を周辺自治体の首長や議会関係者らに説明するためだった。

 早朝からぐんぐん気温が上がったこの日。事前の報道で知った住民が説明会場の市役所の前に続々と集まり一行の到着を待った。暑さと押しかけた住民の人いきれで目まいを覚えそうになった頃に、車列が市役所玄関に到着。すぐに会議室で小川副大臣らによる説明が始まった――。

突如浮上した基地建設の計画

 防衛省が基地建設を検討する無人島の名前は馬毛島。国内の無人島のなかでは2番目に大きく、面積は8.2平方キロ。この島が突如、注目されることになったのは、6月21日にワシントンで日米の外務・防衛担当の閣僚が参加して開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、Mageshima-islandの名前が飛び出したからだ。島に日本政府が自衛隊基地を整備し、米軍が空母艦載機の発着訓練施設として利用する計画を検討していることを日本側が正式提案。アメリカ側はこれを「了」とし、協議後には「日本政府は、新たな自衛隊の施設のため、馬毛島が検討対象となる旨地元に説明する(中略)併せて米軍の空母艦載機離発着訓練の恒久的な施設として使用されることになる」とする共同文書が日米両国の閣僚によって署名された。

 ここでいう空母艦載機の発着訓練(FCLP)とは、横須賀を事実上の母港とする米海軍の空母「ジョージ・ワシントン」の艦載機が飛行甲板上で発着する技術を習得するためのものだ。陸上の滑走路を利用して、模擬的に空母の艦上での着陸と離陸を連続的に再現するために「タッチ・アンド・ゴー」と呼ばれる訓練を繰り返し行う。低空で行われることから騒音が大きく、現在は太平洋上の孤島・硫黄島で行われている。しかし、硫黄島は関東からでも1200キロと遠く、不測の事態が起きた場合に途中で緊急着陸する場所もないために、かねてから米軍はもっと近い場所で実施できるよう日本政府に求めていた経緯がある。

 2プラス2での協議結果を伝える報道に「寝耳に水」と驚いたのは、馬毛島の地元にあたる種子島や屋久島の自治体だ。5月中旬頃から一部新聞によって防衛省が馬毛島に基地建設を計画していると報じられるようになり、6月8日には、小川副大臣や中江事務次官らが鹿児島県庁を訪れ、伊藤祐一郎知事に対し「馬毛島が艦載機の発着訓練の移転先として有力な候補地となっている」と明らかにしたものの、地元の市や町にはほとんど説明がないままだった。「いきなりアメリカとの協議の場に島を持ち出したのは、地元の頭ごなしにコトを進めようとするものだ」(長野力・西之表市長)と地元自治体は反発する。

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