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2018年10月8日

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ブラジルで7日、大統領選挙が実施され、極右・社会自由党のジャイル・ボルソナロ下院議員が首位に立った。当選に必要な過半数を得票した候補者はいなかったため、左派・労働党のフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長とボルソナロ氏との間で、28日に決選投票が行われる。

開票作業がほぼ終わった時点で得票率はそれぞれ、ボルソナロ氏46%、アダジ氏29%だった。

投票前の世論調査結果から、決選投票で両候補はほぼ互角になると予測されている。

大統領選と同時に行われた議会選でも、社会自由党は第一党になる見通し。かつて泡沫政党だった同党の躍進は、ブラジル政治に地殻変動的な激変をもたらした。

ブラジルでは、長年の景気低迷や凶悪事件と汚職の増加は、最大左派・労働党政権のせいだとみなす有権者の反発から、ボルソナロ氏と社会自由党が支持を伸ばしている。

ブラジル国民の選択肢

ブラジル国民は10月28日、まったく異なる2人の候補者から1人を選ばなくてはならない。

軍人出身でカトリック教徒のボルソナロ氏は、伝統的な家族の価値を守ると主張し、福音主義のキリスト教徒からの支持を多く得た。犯罪取り締まり強化を掲げる主張に同意し、ブラジルの治安改善を期待する有権者の支持も取り付けた。

ボルソナロ氏は7日の投票前夜、犯罪者には厳罰で臨むと言明した。銃規制の緩和を支持しており、拷問の正当性も主張してきた。死刑制度も復活させたい考えだ。

開票結果を受けてフェイスブックで生中継した後、ツイッターに投稿した勝利演説で、ボルソナロ氏はブラジル国民がたどる道は2つあると述べた。

「1つの道は、神のそばでの繁栄、自由、家族。もう1つは、ベネズエラの道だ」と、ブラジルの隣国で社会主義政権のベネズエラを引き合いに出した。ベネズエラは深刻な政治・経済危機に見舞われており、200万人以上が国外に脱出している。

ボルソナロ氏はさらに「もうこれ以上、左に一歩たりとも進むわけにはいかない。社会主義や共産主義といつまでも仲良くすることはできない」と強調した。

自分の言動への批判が多いことも認めつつ、「(ブラジル)国民を団結させる。我々はみんな一緒に偉大な国になる」と述べた。

ボルソナロ氏はさらに、電子投票システムに「問題」がなければ、自分の当選はすでに決まっていたはずだと述べた。

「これがなければ、共和国の大統領の名前は今夜の時点で明らかになっていたと確信している」

ボルソナロ氏は「問題」が何かは明言しなかった。

ブラジルの選挙管理当局は、投票はこれといった問題もなく平穏に進められたと説明している。

アダジ氏の反応は?

アダジ氏は、ボルソナロ氏の言動に尻込みする人に向けて、自分は信頼できる候補者だと強調してきた。

決選投票進出が確定後、アダジ氏は自分と労働党は「議論だけで、銃は使わない」と述べた。

ボルソナロ氏が首位に立ったことについて、アダジ氏は「投票結果はブラジル民主主義が直面しているリスクを警告するものだ」と述べ、自分への挑戦と受け止めていると話した。

「我々はこの事態に、責任感を持って取り組まなければならない。我が国の民主主義者を一つにして、不平等を減らし、社会正義を実現したい」と、歓声をあげる支援者に向かって述べた。

アダジ氏はまた、決選投票に進めたことで、自分と党が「黄金の機会」を与えられたとも話した。


ボルソナロ氏の問題発言とは

犯罪取り締まり強化を掲げる元軍人の様々は発言は、20年近く続いた軍政時代の記憶を呼び起こす一方で、凶悪犯罪の増加を懸念する有権者の支持を集めた。軍もボルソナロ氏を支持している。

女性や同性愛者を攻撃する様々な発言に対する抗議は相次いだが、人工中絶福反対の姿勢は保守的なキリスト教徒に支持された。

息子のエドゥアルド氏は、ドナルド・トランプ米大統領の戦略担当だったスティーブ・バノン氏と撮影した写真をツイートし、「文化的マルクス主義」と戦う父親の選挙戦の一部始終をバノン氏が「承知」していると書いた。

経済政策においては、ボルソナロ氏は「小さい政府」を支持している。減税や国有企業の民営化、外資による天然資源保有の制限などを発表している。

ボルソナロ氏は9月初めに遊説先で刺され、マスコミの注目を一身に浴びた。


<解説> 「まだまし」な候補――ケイティ・ワトソンBBC南米特派員

ジャイル・ボルソナロ氏は、世論調査の予想とは裏腹に、1度目の投票で大統領に当選すると考えていた。投票所に現れたボルソナロ氏は、「10月28日はみんな海に行こう」と言っていた。ボルソナロ氏の支持者は何週間も前から、最初の投票で当選すると話していた。

最近の世論調査でボルソナロ人気は急上昇したが、次の指導者がボルソナロ氏かアダジ氏か知るために、国民はあと3週間待たなければならなくなった。

ブラジルの人たちは、国がとても分断して、もろい状態にあると感じている。有権者と話すと、そう思える。実に多くの人が、「まだましな方」に投票するつもりだと話していた。

ブラジルには、もう2度と労働党に政権をとらせるものかと、固く決意している人たちがいる一方で、民主国家としてまだ若い国を極右候補者に支配させるものかと必死な人たちもいるのだ。

ブラジルを緊張感が覆っている。両陣営が今まで以上に精力的な選挙運動を展開する今後数週間、この緊張感は続くだろう。最終的に誰が勝つかによって、ブラジルの未来は大きく異なる。

(英語記事 Brazil election: Far-right Jair Bolsonaro wins first round

提供元:https://www.bbc.com/japanese/45782675

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