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2018年10月10日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

留学生は自由に仕事が選べる

原付バイクで溢れるベトナムの首都ハノイ(筆者撮影、以下同)

 では、出稼ぎの手段として、なぜ「技能実習」ではなく「留学」を選ぶのか。実習生として来日すれば、最長3年(制度変更によって今後は5年)までしか働けない。配属先の職場も変われず、賃金も手取りで月10万円程度に過ぎない。

 それが留学生では、アルバイトの仕事が自由に選べる。「週28時間以内」という就労制限はあるが、法律に違反して働くことは難しくなく、実習生よりもずっと稼げてしまうのだ。また、うまくいけば、日本で就職もできるかもしれない。そのため「技能実習」ではなく「留学」し、出稼ぎに励む外国人が後を絶たない。

 ただし、日本への留学には費用がかかる。その額は、日本での入り口となる日本語学校に支払う初年度の学費や寮費、留学斡旋ブローカーへの手数料などで150万円前後に上る。途上国の庶民には、とても用意できる金額ではない。そこで留学希望者は費用を借金に頼る。日本に行って働けば、短期間で返済できると考えるのだ。

 日本語も不自由なまま来日する留学生であっても、アルバイトはすぐに見つかる。だが、仕事は日本人の嫌がるものばかりで、時給も最低賃金レベルに過ぎない。「週28時間以内」で働いていれば,借金の返済は進まない。翌年分の学費も貯める必要もあるため、彼らは法律に違反して働くことになる。アルバイトをかけ持ちすれば、上限を超えて働くことは簡単だ。

 

 多額の借金を背負い、出稼ぎ目的で来日する“偽装留学生”たちーー。政府は本来、彼らの入国を認めていない。「留学ビザ」は、アルバイトなしで日本での留学生活を送れる外国人に限って発給されるはずなのだ。その経済力を“偽装留学生”は有していない。

 留学希望者はビザ申請時、親の年収や預金残高が記された書類を法務省入国管理局などに提出する。“偽装留学生”の書類には、ビザ取得に十分な年収や残高が載っているが、すべてはデタラメだ。彼らを送り出すブローカーが行政機関や銀行に賄賂を払い、でっち上げの数字が記された“本物”の書類を用意する。そんな書類を日本側の当局が受け入れ、ビザを出している。留学生を労働力として利用したいからである。

 そうした“偽装留学生”の最大の送り出し国がベトナムだ。今、現地では何が起きているのか。ベトナム取材で探ってみることにした。(続)

  
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