WEDGE REPORT

2018年10月11日

»著者プロフィール
閉じる

出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

日本に留学すれば、月20万〜30万稼げる

 ベトナム経済も成長しているとはいえ、恩恵は一般庶民にまで届いていない。共産主義国で、かつ賄賂大国という事情もあって、政府の有力者にコネのない若者には生き難い国でもある。海外への出稼ぎ希望者は多いが、行き先は台湾や韓国、もしくは実習生を受け入れる日本などに限られる。そんななか、日本への「留学」の道が開かれたのだ。

 ただし、よほどの富裕層でなければ、日本の留学ビザを取得するための経済力はない。ベトナムの庶民が日本へ留学するためには、斡旋業者に頼り、ビザ取得に必要な証明書類をでっち上げてもらうしかないのだ。

 「日本に留学すれば、月20万〜30万円は簡単に稼げる」

 出稼ぎブームの初期には、そんな甘い言葉で若者を勧誘する斡旋業者も多かった。「20万〜30万円」といえば、ベトナム庶民の年収に匹敵する金額だ。留学生のアルバイトとして認められる「週28時間以内」という法律を守っていれば稼げないが、事情を知らないベトナム人たちは業者のもとへ殺到した。そして、でっち上げの数字が並ぶ書類を準備してもらい、続々と日本へ出稼ぎに行くことになった。

 斡旋業者には、日本へ留学生を送り出せば1人当たり数十万円が入る。留学希望者が支払う手数料に加え、受け入れ先となる日本側の日本語学校から1人の留学生につき10万円程度のキックバックがあるからだ。物価水準が日本の10分の1程度のベトナムでは、日本への留学生送り出しは「産業」と呼べるほどだ。

 斡旋ビジネスには、現地の日本人が関わっているケースも目立つ。受け入れ先の日本語学校とのやり取りなどが生じるからだ。

 「ハノイで複数の日本語学校を経営し、1億円以上も稼いだと豪語している日本人もいる」(現地在住の日本人)

 行政機関や銀行に賄賂を払い、ビザ取得に必要な書類をでっち上げ、日本へと留学生を送り込んでのことだ。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る