WEDGE REPORT

2018年10月11日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

日本で何年、働きたいですか?

 ファンさんへの取材を終える頃、彼が遠慮がちにこう頼んできた。

 「学生に話をしてもらえませんか?」

 筆者が応じると、教室へと案内された。日本への留学を希望する学生たちの前で、ファンさんは私を「日本から来た先生」だと紹介した。その瞬間、教室にいた約20人の学生たちの目の色が変わった。日本の日本語学校関係者が、留学生のリクルートに来たと勘違いしたようなのだ。

 学生たちには、本当に日本へ行けるのかどうか不安を抱えている。莫大な借金を抱えて留学するというのに、業者のことを信用していない。そうした彼らの心情を察し、ファンさんは日本人の筆者を学生たちの前に連れ出し、彼の会社が日本とコネクションがあると示そうとしたのだ。

 「日本で何年、働きたいですか?」

 学生たちにそんな質問を投げかけてみた。「出稼ぎ」を前提にした問いである。質問は元実習生で、カタコトの日本語を話すベトナム人教師が訳してくれた。

 挙手を求めると、ほとんどの学生が「5年」と答えた。なかには「10年」という学生もいたが、彼らは当たり前にように手を挙げている。留学希望者の目的は、やはり「勉強」ではなく出稼ぎなのである。

 学生は皆、純朴そうだった。聞けば大半が、ハノイ以外の出身者だという。現在、日本への「出稼ぎブーム」の中心は、都市部から田舎へと移っているのだ。(続)

  
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