解体 ロシア外交

2011年7月29日

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 第一に、使用済み核燃料を処分する体制を日本も確立し始めたことがある。

前編で述べたように、ロシアは自国原発の「売り」を、安価な価格と使用済み核燃料の処分という、原発のプロセス全体に責任を持つ体制だとしてきた。

 それに対して、日本の経済産業省や米エネルギー省、モンゴル政府は、モンゴル産のウラン燃料を原発導入国に輸出し、使用済み核燃料の処分はモンゴルが請け負う「包括的燃料サービス(CFS)」構想に向け、議論を急いできた。

 7月18日、3か国政府のCFS構想に関する合意文書の原案が明らかになった。モンゴル国内に使用済み燃料の貯蔵施設を建設するにあたって、IAEAが技術援助をする可能性もあると記載されている。

 これが成立すれば、核燃料の供給と使用済み核燃料の処分を一貫して引き受ける初の国際的システムが成立することになり、その処分体制を整備できていない日米の欠点が補われる。さらに、日米は新規原発導入国に原発を売り込む上で大きな利点を得られ、ロシアの原発商法(最近、中国やフランスもこの商法を取り入れることに関心を示しているという)にも対抗できるようになるのである。本交渉は政府レベルで進められているが、東芝も関わっているという。

ロシアの原発戦略に対抗する
日本企業の動き~②リトアニア原発をめぐる攻防

 第二に、リトアニア原発を巡る攻防がある。前編で紹介したとおり、リトアニア原発では、日立GEニュークリア・エナジー社の建設受注が内定しているが、それを邪魔しようとしているのがロシアである。その動きはベラルーシ原発新設計画と深く関連する。

 ロシアは、リトアニアと国境を接するベラルーシとカリーニングラード(ロシアの飛び地)に一カ所ずつの原発計画を提案し、それによって、ヴィサギナス原発建設への投資を阻害しようとしているのである。ヴィサギナス原発で発電した電力は近隣諸国への輸出が想定されているが、ベラルーシやカリーニングラードでも原発が創業し始めると、それらはバルト・東欧圏での電力市場においてライバル関係となる。ロシアとしては、ヴィサギナス原発計画をつぶし、バルト・東欧圏での電力市場を掌握したいところだが、ヴィサギナス計画が早期に進んだ場合、ロシアの2つの提案の戦略的意味は極めて低下することになる。

 ベラルーシ原発の建設予定地としてはアストラベツが選ばれているが、この背景には、ロシアが、リトアニア人が環境や安全上の理由で抗議行動を起こすことを想定しているという。リトアニアや国際社会は、ベラルーシ原発の安全や環境問題について様々な問い合わせをしているが、ロシアもベラルーシも返答していないという。

ロシアの野望 実現は困難か

 実際、ロシア側がきちんと立地の調査や明確な建設計画を持っているかは疑問であり、ヴィサギナス計画を妨害するための単なるポーズであるという見方も少なくない。そのため、リトアニア人の一部は政府がベラルーシ原発に明確な抗議をすることを望んでいるが、政府はあえて政治問題化を避け、冷静な態度で問い合わせをすることに終始している。ロシアの動きが単なるポーズであった場合、リトアニアがラディカルな動きに出れば、ロシアの思うつぼになるからだ。リトアニアにとって最善のシナリオは、ベラルーシに原発計画を放棄させ、ヴィサギナス計画に誘致したうえで、原発完成の折には、電力も買わせるというものだが、それは容易ではなさそうだ。

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