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「iPhone電波悪い」に対する孫社長の反論
ソフトバンクを襲うiCloudと定額制破綻

WEDGE Infinity編集部

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 「今までもクラウドはあった。でも、ユーザーが取扱説明書など読むことなく、シンプルに美しく使えるのは、iCloudしかない」

 孫社長は、スティーブ・ジョブズかと見紛うほど、時間を割いてアップル社の製品・戦略を絶賛した。「両刀使い」のくだりでは、パワーポイントにきちんと二本の刀のイラストを入れておくほどの力の入れようである。

 iCloudは同期のために、バックグラウンドで自動的に通信を行う。孫社長の推奨する使い方「2台持ち+クラウド」は、当然ソフトバンクの業績を押し上げるが、所有する通信インフラに負荷をかけてしまう。連結設備投資額「1兆円」のうち、どれだけがインフラの充実に費やされるのか不明だが、たとえそれが巨額だったとしても、増加する一方のトラフィック(情報量)を賄い、さらに「ドコモを上回る」通信品質を達成するものなのかはよくわからない。

孫社長の不公平論

 決算説明会の質疑で、孫社長は2つの方向性を示した。ひとつは「900メガヘルツ帯の許認可の必要性」であり、もうひとつは「無制限定額制の放棄の可能性」である。

 孫社長はかねてから、通話品質の問題を攻められると、必ず「ドコモ、KDDIに与えられた800メガヘルツ帯が、ソフトバンクに与えられていないのは不公平」というロジックを持ち出してきた。今回の説明会でも「900メガヘルツ帯の許認可を受けた前提での1兆円の設備投資」という表現をしている。

 実際、電波は低周波数のほうが直進性が低く障害物を回りこむ特性があり、1つの基地局でカバーできるエリアも広い。だから2ギガヘルツ帯(=2000メガヘルツ帯)を与えられたソフトバンクは不利であり、地デジ化によって生み出された900メガヘルツ帯の配分では真っ先にソフトバンクが優先されるべきという理屈である。

 しかし、もともとソフトバンクが、800メガヘルツ帯を持たないことを承知の上でボーダフォンを買収していることや、ドコモ側から「エリアを作る際に800メガヘルツと2ギガヘルツで大きな差は出ない」との反論が出ていること(ケータイウォッチの記事)を考えると、不公平論を完全に受け入れることは難しい。少なくとも、iPhone、iPadを大量に投入するというのはソフトバンク独自の経営判断だから、それに見合うだけのインフラを準備するのは、800メガヘルツ帯の有無にかかわらず、通信会社としての責務であろう。

やはり定額制は破綻するのか

 孫社長は、以前から定額制維持の困難さに触れてきたが、今回の質疑ではより踏み込んだ表現をとった。

 「2%のユーザーが通信インフラの4割を占有している。5%のユーザーだと、過半数を占める。残りの大多数の人はみんな迷惑しているわけだ。無制限の完全な定額制は、アンフェアであり、世界中で起きている定額制から従量制の移行は、ずっと検討している。電波の周波数は許認可であり、一気に10倍にはどうしてもならない。ソフトバンクに限らず周波数は足りなくなる。無制限の定額制は難しくなるだろう」

 米通信会社、AT&Tやベライゾンはすでに従量制への移行を行っている。ただし、その料金体系は日本より安い。世界的にみても高めの料金で高収益をあげてきた携帯通信各社が安易に定額制を放棄することは、ユーザーの理解を得られないだろう。

 ソフトバンクのぶちあげた「1兆円設備投資」の先にどのような未来があるのだろうか。

 
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