世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月29日

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 10月5日、香港駐在のフィナンシャル・タイムズ記者のビザ更新が香港政府によって拒否されたことに関し、英国外務省の報道官は、次のように述べた。

(masta4650/Radionphoto/dp3010/AQtaro_neo/iStock

 「我々は、マレット氏のビザ更新が拒否されたことを懸念している。我々は、香港政府に早急な説明を求めた。香港における高度な自治及び表現の自由は、香港の生活様式の中心であり、完全に尊重されなければならない。」

 10月9日には、欧州連合(EU)の報道官が次のような声明を発出した。

 「フィナンシャル・タイムズ紙アジア・ニュース編集者であるヴィクター・マレット氏の就労ビザの更新を拒否した香港当局の決定は、憂慮すべき前例となる。当局から信用にたる説明もなく、この決定は政治的動機によるものとみられ、従って香港における報道の自由及び表現の自由に関して深刻な懸念を提起する。これは、香港の国際的立場及び「一国二制度」原則の信頼を害すリスクがある。記者達は、独立して介入されずに仕事を遂行することが認められなければならない。」

 今回、何故、フィナンシャル・タイムズ紙のマレット記者のビザの更新が拒否されたかについては、上記にもあるように香港政府からは正式な説明はない。しかし、一般的にはマレット氏が副理事長を務める香港外国特派員クラブに北京が気に入らない香港国民党の主宰者を招いて講演会を行なったことへの報復措置と言われている。

 10月8日、フィナンシャル・タイムズ紙は「言論の自由に対する香港の動き」と題する社説を掲げ、今回のビザの更新拒否は、香港の人々にとって背筋が寒くなるようなものとなった、と述べた。実際、1997年の香港の中国への返還後、外国のジ ャーナリストが実質的に追放されたのは、今回が最初である。悪しき前例を作ってしまったということである。

 香港基本法と中英協定に基づく香港住民の自由、権利は、習近平体制になり、どんどん制限されてきている。今回の件も含め、遺憾なことであるが、西側としてできることは少ない。 今の中国には、国際的批判に配意する気持ちが小さくなっている。

 今後、ますます香港における基本的人権侵害のケースが増えてくるものと思われる。 香港人にとってこれからはつらい時期が続くだろう。 

 中国の今の香港政策が中国の利益になるかは疑問である。 

 第1に、香港が自由な地域としてあることが、香港の繁栄の基盤である。香港が自由や権利が保障されない地域になれば、外国企業も地域本部を香港におく理由がなくなる。「金の卵」を生むガチョウを絞め殺してしまうような結果になる可能性がある。

 第2に、一国二制度は中国の台湾政策の基本でもある。そのモデルとなる香港で、一国二制度は自由や権利を守れないということなら、民主化した台湾の人々は一国二制度を受け入れる気にはならないだろう。 

 第3に、1997年から50年後は2047年であるが、国際協定に違反する国であると中国が見られると、中国の国際社会でのイメージは悪くなる。こういうことは長期的な不利益につながる。 

 香港進出企業や進出を考えている企業は、今回の事件の含意をよく考えるべきだろう。
 

  
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