前向きに読み解く経済の裏側

2018年10月29日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

暴落が増幅して「この世の終わり」に見えるメカニズム

 問題は、暴落が一定水準を超えると、暴落が売り注文を増やして更なる暴落を招くメカニズムが働くことです。

 一つは、借金で株を買っている投資家が、心配になった銀行から返済を迫られて、売りたくないのに売らざるを得なくなることです。信用取引で買っている個人投資家が「追加証拠金」を要求されて、泣く泣く売却するケースもこれに含まれます。

 今ひとつは、機関投資家の多くが担当者に「損切り」のルールを課していることです。「一定以上の損失を出した担当者は、持っている株を全て売って休暇をとって頭を冷やせ」というわけです。損失が膨らむと頭に血が上って冷静な判断が出来なくなるためだとも言われていますが、いずれにしても担当者は売りたくないのに売りを強要されるわけです。

 また、株価が暴落すると、「売りたくない売り」が出てくることを予想した投機家が、前もって売っておくことです。さらに暴落してから買い戻せば良いわけですから。

 そして最後は、暴落によって「この世の終わり」が来ると勘違いした初心者が投げ売りすることです(笑)。

 そうした売りがすべて出た後は、売る人が残っていませんから、株価は急激に戻る場合も多いようですが。

売るべき時に売らないのは損をしたくない投資家心理

 以上、売るべきでない(3)の場合の狼狽売りについて記してきましたが、反対に上記の(1)および(2)の場合は、原則として売るべきなのに売ることができない初心者が数多くいます。「初心者は損切りが下手だ」と言われているのです。それは、「今売ったら損失が確定してしまう」と考えるからです。

 「今売ったら、損失が確定してしまい、自分がバカな投資をしたということになってしまう。持っていれば株価が戻り、損失が回避でき、自分がバカな投資をした事にはならないかもしれない」と考えるわけです。

 しかし、それは正しい考え方ではありません。筆者は株価が暴落しても売れずにいる初心者には「あなたが今から株式投資を始めるとして、今の値段で株を買いますか?」と聞きます。答えがノーなら、すぐに売るべきです。

 今持っている株を持ち続けるのと、新しく株を買うので、判断が異なるのは、合理的な投資とは言えません。損を確定したくないという心理が投資判断を誤らせているのです。

 仮に証券会社の取引手数料がゼロであったならば、毎朝持っている株を全部売って、何を買おうか毎朝考えるべきです。たままた売った株と同じ株を買う場合もあるでしょうが、違う株を買う場合もあるでしょう。

 実際には、手数料がかかりますから、売る必要はありませんが、頭の中では「買った時の値段のことは忘れて、今日は今日の投資に専念すべき」なのです。

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