WEDGE REPORT

2018年10月30日

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新田日明 (にった・あきら)

スポーツライター

スポーツライター。

24日シャルケ戦の長友(AP/AFLO)

 日本のダイナモが悲劇に見舞われた。ガラタサライの長友佑都が24日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)のホームでのシャルケ戦に先発出場したものの、試合終盤で肺を負傷。途中交代に追い込まれた。ボールが胸を直撃した影響で肺気胸を患い、現地の病院で数日間入院して経過観察を行うという。この試合では左サイドバックで先発し、前半7分に左足でワントラップするとボールを右足に当てる〝ダブルタッチ〟から相手の股下を抜く、芸術的なプレーを披露。  

 UEFA公式の「スキル・オブ・ザ・デー」に選出されただけに、アクシデント発生は不運としか言いようがない。

 肺気胸は何らかの要因によって肺に穴が開き、空気が漏れてしまう病気だ。負傷の直接要因と思われるのは後半35分、長友が体を張って胸でボールをブロックした場面。しかしながら実際には76分あたりからペースがグンと落ちて味方のパスに反応できておらず、この頃から肺に何らかの問題が生じていたのではないかと指摘するメディアもある。

 クラブ側の説明によれば現段階で症状は深刻ではなく、27日に発表された情報によれば胸腔鏡下手術を受けたという。順調ならば数日以内に退院できる見通しだが、それでも楽観視はできない。なぜならば肺気胸は一度治っても再発する可能性があり、豊富な運動量が生命線である長友にとっては致命的な〝爆弾〟を抱え込むことにもつながりかねないからだ。

 少なく見積もってもチーム復帰までには最低でも1カ月程度を要する見込み。だがデリケートな箇所だけにコンディションが完全に整わなければ、復帰がさらに遅れる可能性も否定できない。気圧の変化が生じる飛行機での移動も多々あるだけに、肺にダメージを負った長友の復帰にはクラブ側も慎重にならざるを得ないはずだ。いずれにせよ、これで11月16日に予定されている日本代表の試合(ベネゼエラ戦)へのメンバー召集は厳しくなった。

 しかも、たとえ完治したとして以前と同じようなプレーが出来るのか。長友のストロングポイントは相手に当たり負けしない屈強なフィジカルと球際の強さに加え、先にも挙げた豊富な運動量だ。たとえば攻撃の際には猛前とトップスピードで駆け上がり、相手最終ラインの裏をつく。守備範囲も広く、トランジッションにも優れている。とにかく動き回るからチーム内での走行距離は毎試合でほぼトップランク。これまで欧州リーグで活躍する主力選手たちを凌駕してきた運動量にブレーキがかけられることになると厄介だ。

 ネット上でも肺気胸を患った経験者たちによる「簡単な病気ではないし、前のようなスタミナの維持は難しくなってしまうのではないか」との指摘が散見され、ファンも大いに心配している。確かに実際のところ医療関係者にも取材してみたが、この肺気胸はアスリートたちにとってかなり大きなダメージとなるケースが残念ながら多いようだ。肺は心臓とともにエンジンのような役割を果たす中核のパーツ。そのプレーから「ダイナモ(発電機)」と呼ばれる長友にとっては、なおさらだろう。

 とらえようによっては、選手生命にかかわる可能性のある負傷と言えるのかもしれない。しかし、長友には何とか乗り越えて再びピッチで負傷の影響をまったく感じさせないハイパフォーマンスを発揮してほしいと願う。

 かつて長友は学生時代、コンディション面で大きな壁にぶつかって厳しい局面に立たされている。東福岡高から進学した明治大学サッカー部に在籍中、持病の腰痛が悪化。腰椎分離症とヘルニアのダブルパンチに見舞われて満足に走れないほどの状態になり、ベンチにすら入れずスタンドでチームメートの応援に明け暮れる日々が続いた。

 一時は選手生命の危機とまでささやかれていたが、当時はまだほとんど知られていなかった「体幹トレ」と出会い、懸命のリハビリの末にわずか2カ月でピッチに復帰。しかも腰痛を克服できたおかげで以前よりも動きが格段にレベルアップを果たした。大学2年時にJリーグ・FC東京との練習試合では当時無名選手だったにもかかわらずプロをも凌駕する1対1でのフィジカルの強さを見せつけ、関係者をうならせたのはサッカー界でも有名な話だ。すぐにFC東京側から特別指定強化選手としてオファーをかけられて練習参加を果たすようになり、同クラブからプロの道をスタート。その後、欧州へ移籍し、大成功の道を歩んだ経歴は今さら振り返るまでもあるまい。

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