<短期集中連載>ウナギの謎に迫る

2011年8月1日

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WEDGE Infinity編集部(語り手:青山潤・東京大学大気海洋研究所特任准教授)

青山潤(あおやま・じゅん)
東京大学大気海洋研究所特任准教授。1967年、横浜市生まれ。東京大学農学生命科学研究科、博士課程修了。その後、東京大学海洋研究所に所属し、塚本勝巳教授の下でウナギの研究に携わる。2008年より海洋アライアンス連携分野特任准教授。現在も、研究の傍らエッセイなどを執筆している。著書に、ウナギの新種を求めてアフリカ大陸を右往左往した『アフリカにょろり旅』や、ウナギの標本収集のためにタヒチ島などを訪れた『うなドン』(ともに講談社)がある。

 7月10日に「天然のウナギ卵、初の大量採集に成功」というニュースがあったことを覚えているでしょうか。ニホンウナギの生態調査は、6月24日から7月10日にかけて、グアムから西に200キロ以上離れた西マリアナ海嶺付近において行われました。

 調査期間中は研究船「白鳳丸」で生活することになりますが、具体的にどう卵を採集したのか、船の生活はどんなものなのかご紹介しましょう。

意外に地味な
採取と選別作業

巨大な網を1~1時間半近く引っ張り続け、ウナギの卵や稚魚を狙う。

 調査には直径3メートル、長さ15メートルの巨大なプランクトンネットを用います。動物プランクトンや魚卵、仔魚などを採集するため、網の目合いは0.5ミリと非常に細かいものになっています。これを海中に投入し、指定の深度で1時間半ほど曳網するのです。

 これまでの調査の結果、ウナギは新月の2~4日前の夜に、西マリアナ海嶺(海底山脈)付近にある潮目近く(塩分濃度が急激に変わるところ)で産卵することがわかっています。

 卵や仔魚は自力で泳ぐことができないので、基本的には海流に流されている状態です。このため、産卵の場所と時間の目星を付け、周辺の海流を見ながら運ばれてくる卵を狙うのです。

網が巨大なため、ウィンチを使って引き上げる。

 ウナギの卵の比重は、水深150~200メートル程度の海水と等しく、このあたりの水深を漂っています。水深10キロにも及ぶ世界最深の海、チャレンジャー海淵のすぐ近くで、わずか100~200メートル程度の浅いところを必死に網でさらっているわけです。

 引き上げられた網には、たくさんの生き物が入っています。研究者たちは、これを手のひらに乗るほど小さな透明な容器に少しずつ移し、下から光をあてて、仔魚と卵を探し出します。光を当てることで、透明な卵を見つけやすくなります。

ウナギの卵と稚魚の選別作業に、研究者は黙々と取り組んでいる。

 これには大変な集中力が必要となります。卵は直径が1.5ミリ程度しかなく、仔魚も体長5ミリ程度で糸くずのようなものです。今回の調査では、1網の選別作業に8人で1時間ほどかかりました。台風の接近などにより船が大きく揺れるときには、この作業は肉体的にかなりきついものになります。船に弱い人は、ひとたまりもありません。

 選別作業が終わるのは、次の観測点に到着し、再び網を投入する頃です。網を曳いては、選別し……、これをひたすら繰り返すことになります。

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