オトナの教養 週末の一冊

2018年11月1日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 「#metoo」ムーブメントにより、国内外問わず、さまざまなセクハラ報道がなされるようになってきた。これまで痴漢をはじめとする性暴力の被害にあっても、我慢したり諦めたりすることしかできなかった人たちの怒りが爆発しつつあるのが現状なのかもしれない。そこで今回は『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)が話題のライターで、一般社団法人Springのスタッフでもある小川たまか氏に性暴力に関する男性の思い込みや、性犯罪刑法の改正などについて話を聞いた。

(写真:ロイター/アフロ)

――性暴力やその被害者について取材を始めたキッカケは?

小川:2015年にあるネット記事を読んだことです。「女性専用車両が必要かどうか」を女性にアンケートし、ライターが結果をまとめたものでした。アンケート結果で60代女性の7割が必要という回答に対し、そのライターは「痴漢も相手を選ぶと思いますけどね」といった趣旨のことを書いていた。同じライターとしてこういう掲示板の匿名書き込みのようなことを記事に書くのはどうなのかなと思ったのと同時に、男性と女性では見えているものが違うのではないかと感じました。そこで、私自身の痴漢被害についてnoteというブログサービスに書きました(https://note.mu/ogawatamaka/n/n209d5eb2807f?magazine_key=m3dc3fbbea95e)。

――男性と女性では見えているものが違うのではないか、というのは具体的にはどんなことでしょうか?

小川:毎日のように痴漢被害にあう人もいますし、服の上から触られることだけが痴漢被害のすべてではありません。服の上からといっても、一瞬ではなく、執拗に何分間も触り続けられることもある。その頻度や深刻度は男性が思っている以上なのではないかということを、私の体験を交えながら書いたその記事にたくさん反響がありました。性暴力についてよく知らないはずなのに、皆「知っている」と思い込んでしまっている。それだけ偏見や誤解が多いことは、取材を通じて非常に強く感じています。

――自身の痴漢被害について書くのは、誹謗中傷なども含め怖くなかったですか?

小川:抵抗がなかったわけではありません。当時34歳の私が高校生のときの痴漢被害について書くことで「昔のことをいつまでも言い立てている」と思われるのは嫌でしたし、「痴漢されるなんて性的魅力があると自慢したいの?」というようなことを言ってくる人もいます。ただ、自分にも姪や甥ができて、痴漢という性暴力の問題にきちんと立ち向かうことが、大人の社会的責任ではないかと思ったんです。意外でしたが、記事に対しては好意的な反響が多かったです。

――よく聞く男性の声として「そんな下着が見えそうなスカートを履いているから痴漢に合うんだ」「男を誘惑するような服装をしているからだ」、酷い意見になると「男は性欲を抑えられないんだ」といったものまで耳にします。

小川:男性が性欲を抑えられないというのは、男性には理性がないと言っているようで、同じ男性たちに対しても失礼ですよね。

 加害者がターゲットを選ぶ動機としては「魅力的だったから」「好みだったから」より「そこにいたから」という加害者の回答が多かったと、警察庁の痴漢被害調査では出ています。他にも、加害者臨床の専門家で、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生の著書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)では、「かわいいから」「派手だから」よりもおとなしく、声を出さない相手を加害者は選ぶと書かれています。

 小中学生や制服を着た学生が痴漢に狙われやすいのは、小児性犯罪の傾向がある加害者もいますが、大人に比べ子どもだと騒がれにくい点もあると思います。

 知り合いの女性で、女子高生の時、鬼ギャルと言われる派手な服装をしていた方がいます。スカートから下着が見えそうな服装で歩いていたそうですが、一度も痴漢にあったことはないと言います。こういった話を聞くと、「露出が多いから狙われやすい」という単純な話ではないのではないかなと思います。

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