2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2018年11月1日

「軍政への逆戻り」はあり得ない

 ボルソナロ氏が権威主義的発言を繰り返し、軍政へのノスタルジアを隠そうともしないことについては前稿で指摘した。決選投票では「自分は、選挙の敗北を受け入れることはない」とし、敗れた場合、いかなる手段にでも打って出る可能性をほのめかせた。

 だが、軍はボルソナロ氏を支援し、人材の提供等には応じるとしても、自らが直接国政の場に出ることには否定的である。実際、国民の69%は民主主義を支持しており、軍が表に出て国民の支持を得られる状況にないことは明らかである。

「熱狂」の賞味期限

 最後に、改革の行方はどうか。ブラジル政治が汚職体質にあり、また、経済が財政赤字の重圧の下にあることは改めて言うまでもない。政治の改革には選挙制度と政党の改革が不可欠であり、財政赤字の改善には、就中、年金制度改革が待ったなしである。ブラジルが再生するか否かは偏にこうした改革の成否にかかっている。

 しかし、ボルソナロ氏が大統領に就任し、まずこういった難題から手を付けていくだろうと見る向きは少ない。これらはいずれも、その必要性を疑う向きはないが、成果が見えにくく、国民が利益を実感しづらい課題でもある。従って、ボルソナロ氏がまず取り組むのは選挙中も強く訴えた治安対策と思われる。銃所持の自由化、犯罪の責任年齢引き下げ、治安部隊の強化等である。

 だが、選挙が終わり、熱狂から覚めた国民は、目に見える成果がなければ容易にボルソナロ批判に廻る。ボルソナロ氏に与えられた時間は決して長くないはずだ。

  
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