2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月7日

 中国に対して遠慮が小さくなったという意味では、EUのフィデリカ・モゲリーニ外交安保上級代表(外相)が10月16日付けで台北タイムズ紙に寄稿した‘Connecting Asia-Pacific and Europe’と題する一文が興味深い。モゲリーニ上級代表は、先に紹介した「欧州とアジアの連結性強化」という概念を説きつつ、台湾との協力も推進していきたい旨、書いている。9月12日、欧州議会はEU対中関係報告書を採択し、その中で、中国の権威主義や台湾への軍事的圧力が両岸関係を不安定化させていると批判するとともに、EUと台湾との投資協議の開始を促し、台湾の国際機関への加盟を支持するなどとしている。自由、人権、民主主義、市場経済などの価値を共有するEUが台湾への関心を高めれば、台湾の孤立を軽減させることになり得る。欧州における台湾への関心の高まりがどの程度本物と言えるか、今後の動向が注目される。

 ASEMに際しては、EUとシンガポールの間の貿易・投資協定(FTA)が署名・発行し、EUとベトナムとのFTAも署名に向けた動きに入った。EUとASEANの首脳会合で、欧州委員会のユンケル委員長は、EUとASEANとの間での利害と価値の共有を強調し、「シンガポールとのFTAが今後の数多くのASAN加盟国との同様の協定の先駆けとなり、最終的にはEUとASEANとの間の協定が結ばれることを望む」と述べた。

 EUのアジアとの「連結性」強化に向けた動きは勢いを増しつつあると見てよいであろう。EUが掲げる諸原則は日本としても共有できるものである。アジアをめぐる日欧協力が、とりわけインフラ投資の分野において、進展することが期待される。

  
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