2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月8日

 ロシアに違反があれば、それを追及していくのがやるべきことであり、その追及の根拠たる条約から離脱してしまえば、ロシアの違反を追及し得なくなる。ロシアの違反を合法化する愚策といわざるを得ない。 

 中国はINF条約の枠外にあるので、INFの開発、配備に自由であることは問題である。この点については、中国にINFの開発、配備について注文を付けるべきであり、ロシアにも中国と同じ自由を与える結果となる条約離脱はすべきではない。中国をINFに取り込むような努力が望ましい。 

 INF条約がなくなれば、中距離核ミサイル配備競争になると思われる。今後、極東については、核トマホーク配備の可能性が大きいが、非核三原則の問題が日本で出てくるほか、韓半島の非核化にも影響があると思われる。 

 INF条約は無期限の条約で、NPTと同じく至高の利益が危うくなった時に脱退できる。こういう脱退条項に今の事態が当たるのか問題であり、米国では議会に相談なくして脱退できるのかとの問題もありうる。違反を理由に脱退できる条約とは必ずしも言えない。米国に届かない巡航ミサイルが至高の利益を危うくするとはなかなか言えない。 

 10月のボルトン大統領補佐官の訪露では、INF条約よりの脱退(6カ月前に通告する必要がある)をロシアにどの程度話したのか、よくわからない。しかし、その議題は、11月11日に開催される第一次世界大戦終戦100周年でパリを訪れるトランプ大統領とプーチン大統領が行うであろう米露首脳会談で、議題になることは間違いないだろう。

 この問題は、日米欧でとにかく相談すべきである。トランプ大統領には、こういうことは勝手にやれないと知らせる必要がある。 

  
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