Washington Files

2018年11月2日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

“背水の陣”で投票日

 今回の中間選挙でとくに与党共和党が苦戦を伝えられる下院選挙で、もし、民主党が多数を制することになった場合、トランプ大統領自身にとってとくに気がかりとなる事態が待ち構えているからに他ならない。

 すなわち、民主党の下院勝利により、新たに下院当該委員会委員長ポストが民主党議員に交代になり、その結果、これまで深い闇に包まれていたトランプ氏の過去の確定申告内容や、大統領就任前までの不動産経営をめぐる数々の疑惑に本格的にメスが入れられることになるからだ。とくに所得税申告内容が議会権限によって内国歳入庁(IRS)から強制的に提出され、もし脱税または不正申告の実態が明るみに出ることになれば、それだけで犯罪行為に相当し、ゆくゆくは任期途中で大統領職を追われるという最悪ケースに発展する可能性も皆無ではない。

 2016年米大統領選に介入したロシアと当時のトランプ選対本部との共謀の疑いについても、下院の各関連委員会で改めて調査のやり直しが行われることも確実なため、大統領としても投票日が近づくにつれて、心中穏やかならざるものがあると推測される。

 その下院選挙の行方については、最後の最後まで予断を許さない。

 下院は現在、全議員435人のうち民主党は194議席にとどまっており、多数を制するには24議席を上積みする必要がある。これまでのいくつかの有力世論調査結果によると、民主党が現状よりある程度の勢力挽回は衆目の一致するところだが、その増加幅については「24議席前後~30議席前後」とばらつきがある。

 しかし、一昨年まで下院議長を務め、今回もし民主党勝利の場合、議長に返り咲きが確実視されているナンシー・ペロシ議員は投票日直前の31日、CBSテレビの深夜番組に出演し「これまで私は(数カ月前から)今日投票が行われれば、民主党が勝つと言ってきた。しかし、今はっきり申し上げる。私たちは勝つ、勝つ、勝つ。11月6日はアメリカにとって偉大な夜になる」と自信に満ちた口調で語った。

 一方、かつて共和党議員として下院議長をつとめたこともあるベテランのニュート・ギングリッチ氏もワシントン・ポスト紙とのインタビューで「民主党は下院で地滑り的勝利を収め、ペロシ女史が次期下院議長に就任する」との見通しを語った。

 今のところ、共和陣営の中でも、「下院敗退やむなし」との悲観的見通しが支配的になってきた。

 こうした最終盤の情勢分析を踏まえてか、トランプ大統領は11月1日から投票日前日の5日間、下院選の共和党候補支援はあきらめ、上院選で民主党と接戦が伝えられるミズーリ、ウェストバージニア、インディアナなど10州に絞り込んで遊説に向かうスケジュールを確定した。

 大統領としてはまさに待ったなしの“背水の陣”で投票日を迎えることになる。

  
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